【第二章 閑話休題 ―旅立ち前夜―】
第二章のあとがきみたいな感じです。
辺境の小さな村に、柔らかな夕陽が差し込んでいた。
赤く染まった空は静かに広がり、鳥たちが巣へ帰る声だけが響く。
村を包む空気は穏やかだが、誠人の胸中は嵐の前のようにざわめいていた。
魔王軍の偵察部隊を退けたことで、この辺境にも魔の手が迫っていることが分かった。
誠人とリルは結界の補強や簡易的な魔方陣を村の要所に刻み、ひとまずの安全を整えた。
だが、それはあくまで「繋ぎ」に過ぎない。
いつか本格的な軍勢がやってくる――それは明白だった。
だからこそ、誠人は村を離れねばならない。
力を磨き、外の世界で情報を集め、魔王と真正面から向き合うために。
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夕暮れ時、村の広場には自然と人が集まっていた。
焚き火が組まれ、子供たちはその周りを駆け回り、大人たちは簡素な料理を持ち寄っていた。
どうやらこれは、誠人たちへの「餞別の宴」らしい。
「ほら、誠人さん! 肉、もっと食べて! 強くならなきゃ、魔王に勝てないよ!」
「わ、わかったから落ち着け……! 俺は家畜じゃないんだからな!」
無邪気に皿を差し出す少年に押され、誠人は苦笑いを浮かべる。
そのやりとりを見ていた大人たちからは、どっと笑いが起きた。
リルは少し離れた場所で、女たちに囲まれていた。
「リルちゃん、誠人さんのこと、ちゃんと支えてあげるのよ」
「え、えっと……は、はい……!」
顔を真っ赤にして答えるリル。
その反応が面白いのか、村の女性たちはクスクス笑いながら次々と声をかけていた。
夜も更け、宴の賑わいが落ち着くと、村長がゆっくりと立ち上がった。
「誠人殿、リル殿……。そなたらのおかげで村は救われた。」
「ありがとう…言葉だけでは足りないくらいじゃ」
村人たちが一斉に頭を下げる。
その光景に、誠人は一瞬言葉を失った。
無我夢中だったが自分のやったことに間違いはなかったと思ったからだ。
「……俺たちは、この村を出ます。けれど、いつまた危機が訪れるかは分かりません。でも俺たちにやれることはやって出ます。だから……安心して暮らしてください」
そう口にしたとき、村人たちの中から「ありがとう!」と声が飛んだ。
やがてそれは波のように広がり、あちこちから感謝の言葉が重なっていく。
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その夜遅く。広場から離れた小道で、誠人とリルは静かに歩いていた。
「……誠人、なんだかんだ言って、名残惜しいんじゃない?」
「まあな。短い間だったけど、居心地がよかった」
村を離れる決意に揺らぎはない。
だが胸に温かく広がるものは確かにあった。
自分を受け入れ、感謝を伝えてくれた人々――
その存在は誠人にとって、前世にはなかった「絆」だった。
夜空を見上げると、星々が瞬いていた。
「行こう、リル。ここからが本当の始まりだ」
「うん……一緒に」
二人の視線は、遠い地平線の彼方に向けられていた。
こうして、誠人とリルは翌朝、村人たちに見送られながら新たな旅路へと踏み出す。
広大な世界と魔王の影が待っている。
これで第二章は終了になります。
次回より第三章に移ります。
引き続きよろしくお願いします m(_ _"m)作者




