【第二章 第十一話 実戦訓練&初戦闘編】
朝日が差し込む村の外れ、誠人とリルはいつもの練習場に立っていた。
前世の力と、地球人としての転生により蓄えられた魔力の融合。
それを、実戦形式で確認するための時間だ。
風に揺れる麦の穂が、かすかに光を反射して揺らめく。
まるで、誠人の心拍と呼応しているかのようだ。
「さあ、誠人、まずは簡単な実戦形式の訓練からだ。私が指示するので、それに合わせて力を出してみて」
リルの声は、普段のおふざけ口調から少し引き締まっていた。
それでも、どこか茶目っ気の残る微笑を浮かべている。
誠人は深呼吸を一つ、拳を握る。
体内に流れる力の感覚が、前よりもさらに鮮明になっている。
まるで自分の血潮のように、自分自身の一部として宿っている。
前世の記憶と、地球での記憶の境界はまだ曖昧だが、この力は確実に現実に存在していた。
「まずは基礎確認――エネルギーの収束、解放、制御。順序良く行う」
リルの指示に従い、誠人は手のひらに小さな光球を形成する。
光は青白く、かすかに回転しながら手のひらに留まる。
前世でもこの形は作れたが、今の力はより安定しているだけでなく、膨大な魔力が内包されているのを感じる。
「うん、いい感じ。でも、今回はちょっとスピードを上げる。敵はあいつらよ。」
リルが指を弾くと、森の影から小さな魔力の反応が漂う。
魔王軍の下級偵察部隊が、遠目からこちらを探っているのだ。
誠人は視線を鋭くし、瞬時にエネルギーの流れを調整する。
光球は一瞬で手のひらから全身に広がり、周囲の空気が振動する。
森の茂みがかすかに揺れ、敵の気配が敏感に反応する。
「準備はいい?」リルが囁き、軽く跳ねるように距離を詰める。
誠人は力を一点に集中し、視界に入った魔王軍の一体に向けて放つ。
光が迸り、敵の前方に小さな衝撃波を生む。
敵は驚き、散開するが、誠人の動きは止まらない。
次々に防御・回避の軌道を読み取り、力を制御しながら無力化していく。
「……すごい、さすが誠人。前世の経験もあるけど、転生で蓄えた力との融合で、反応速度も出力も訓練の度に上がってるわ」
リルの言葉に、誠人は一瞬だけ笑みを浮かべる。
喜びよりも、力の可能性を実感した興奮が混じる。
敵を無力化し終わると、静寂が森に戻る。
倒したわけではない。
あくまで戦闘能力を見せつけ、接触の危険性を排除するだけだ。
下偵察級部隊だから無駄な戦闘はせずに情報を持ち帰ろうとするだろうから。
「……これで村が危険になる前に、次に進む決意も固まったね」
リルが静かに頷く。
力を使いすぎると周囲に影響が出ることを、二人はよく理解していた。
誠人は村の方向を見つめる。
朝の光に包まれた村の屋根が、遠くの森の向こうにかすかに見える。
村人たちにはまだ、自分たちがどれほど守られているかは知られていない。
しかし、この力を制御できる限り、危険は最小限に抑えられると誠人は理解していた。
「リル、準備は整ったな?」
「ええ、誠人。次は実践で試すんじゃなく、次の行動に移るだけよ」
二人は静かに森を後にする。
誠人の中で、力がさらなる精度と威力を帯び、前世の記憶と融合する感覚が残る。
それは、単なる強さではなく、新しい力として目覚めつつあった。
森の小道を歩きながら、誠人は考える。
村に戻る前に、村を守るための簡易的な魔方陣を設置すれば、旅立ちの安全が確保できる。
力の大きさを考えれば、派手な結界ではなく、最低限の警戒と防御を兼ねた設置で十分だ。
村の入口に立つと、誠人は両手を広げ、力を収束させる。
光が掌から渦を巻き、地面に沿って円形の魔方陣を形成する。
青白い光がほんのり揺らめき、村の周囲に静かな防御のバリアを張った。
派手な結界ではないが、外敵の接近を感知し、村人たちを守るには十分だった。
リルが隣で微笑む。
「これで村の安全は確保できたわ。もう安心して旅立てる」
誠人はゆっくりと深呼吸をし、村を見渡す。
屋根の上に光が反射し、朝日の中でいつも通りの日常が続いている。
何気ない光景にこそ、この場所を守る意味があると感じた。
「村人たちには、また会えるよな」
「ええ。でも今は私たちが行く番。力の使い方も確認できたし、次のステップに進む時ね」
二人は肩を並べ、ゆるやかに小道を歩き出す。
風に揺れる草木が足元をかすめ、静かに村を包む。
背後の魔方陣が微かに光り、見えない守りが村を守っていることを示していた。
誠人は前世の記憶と、転生後に蓄えた力の融合を胸に感じる。
これからの道程は未知だが、リルと共に進むことで、どんな困難も乗り越えられるという確信があった。
村を抜ける小道の先には、まだ見ぬ世界が広がっている――光と影が交錯するその先に、誠人たちの新しい冒険が静かに待っていた。
明日も連続で投稿します。




