【第二章 第八話 森の奥と圧倒的な力】
朝霧が丘を覆い、村の景色をぼんやりと霞ませていた。
誠人は肩にリルを乗せ、森の入り口を見据える。
昨日の異変の原因は、まだ完全には取り除かれていない。
森の奥に潜む黒い影が、それを告げているかのようだった。
「気をつけて、あの霧の奥には何かいるわ」
リルが小さく息を吐き、指先で光をちらつかせる。
霧の中に潜むものを警戒してのことだ。
森の中は昼でも薄暗く、地面を這うように濃い霧が漂っている。
やがて黒光りする魔獣たちが姿を現した。
昨日倒した雑魚魔獣よりも一回り大きく、鋭い牙と爪を持つ。
誠人は目を閉じ、体内のエネルギーを魔法として凝縮する。
肩からリルが飛び降り、小さな光を放つ。
「行くよ」誠人が呟き、光の弾を放つと、森の闇を切り裂きながら魔獣に直撃した。
小型の魔獣は一瞬で崩れ、消滅する。
森の奥の大型魔獣も、衝撃波に吹き飛ばされ、木々と共に弾かれた。
リルは肩で跳ねながら、いたずらっぽく笑う。
「やっぱり圧倒的ね」
「まあ、これくらいなら予想通りだ」誠人も微笑む。
チートと言われるほどの力は、こうした雑魚相手ではほとんど消耗もない。
しかし森の奥深く、黒霧の中から体長十メートルを超える巨大魔獣が姿を現した。
重厚な足音と共に木々を押し倒しながら迫ってくる。
誠人は静かに構え、体内の力をさらに高密度に圧縮する。
小さな光の弾をまず放ち、魔獣の動きを止める。
体内の魔法エネルギーで形成した光は、単純な物理では通用しない相手にも効力を発揮する。
リルは結界魔法を展開し、魔獣の四肢を束縛。誠人とリルの連携は完璧で、魔獣は逃げ場を失った。
「これで……十分だな」誠人は体内のエネルギーを一気に解放し、森に光の衝撃波を放った。
巨大魔獣は眩しさに目を閉じ、衝撃に押し流されて周囲の木々と共に吹き飛ぶ。
森は一瞬の静寂に包まれ、黒霧も徐々に晴れていった。
リルは肩に飛び乗り、軽く笑う。
「やっぱりあなたの力はチートね。」
「うん、村の平穏は守れた。」
森を抜け、村へ戻る途中、誠人はリルと戦術や戦い方の確認を行う。
小型~中型の魔獣は瞬時に排除できるが、体内エネルギーの消耗は無視できない。
長期戦に備え、エネルギー管理も戦闘の一環である。
村に戻ると、村人たちは昨日の異変の影響に驚きつつも、被害がほとんどないことに安堵していた。
誠人は自然に村人と会話しながら、リルの指示で魔獣の痕跡を消す。
「……普通に村人と話しながら?作業してるなぁ」
心の中で突っ込みを入れる誠人に、リルは肩で跳ねて「まあ、チートはこういうものよ」と返した。
夕方、丘の上に立つ誠人は静かに空を見上げる。
赤黒い空はまだ遠く、魔王の気配がかすかに漂う。
「……次は、あの赤黒い空の向こうか」
リルは肩から光を放ち、二人を包む。
「さあ、誠人。私たちの本当の戦いは、これからよ」
丘の上で光と影が交錯する中、誠人の体内の魔法は静かに覚醒していく。
村の小さな異変を制した経験が、次なる戦いへの自信となり、森の静寂の中で二人は次なる試練へ歩みを進めた。




