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【第二章 第一話 再会と自己紹介】

第二章が始まります。


少しでも読者の皆さんに楽しんでもらえるように頑張ります!


よろしくお願い致します m(_ _"m)作者

朝靄(アサモヤ)がまだ村を薄く包みこんでいる。


木々の葉が露を落とし、鶏の鳴き声が遠くで響いた。


昨日から続いていた不可解な異変


家畜の落ち着きのなさや畑の苗の萎れ


それらを抱えたまま、村は今日も動き始めていた。


誠人は丘の上に立ち、静かに村を見下ろしていた。


昨晩、告げられた「自分はこの世界の人間であり、転生を経て戻ってきた」という衝撃の言葉が、頭の中で渦巻いて離れない。


「……本当に、俺が前世でここにいた……?」


呟いた声は朝の風にさらわれ、答えは返ってこない。


代わりに、彼の肩に軽やかな重みがふわりと乗った。


「むー、考えすぎて眉間にシワ寄せるの、相変わらずだねぇ、誠人」


いつの間にか肩に止まった小さな影――

衝撃の発言を放った張本人がニコニコと覗き込んでいた。


「おまえ……いや、名前は……」


「ふっふーん。聞きたい?改めて聞きたい? 覚悟はいい?」


自慢げに胸を張った妖精は、

小さな羽をパタパタしながら、わざとらしく咳払いをした。


「わたしの名は――リルファニエル・クルサティオス・ヴェルディアナ・セリフィアント・オルマグナティウス・フィルカリエル・アストラルヴェニオ・カリステルノヴァ・エルファニクシア・ボルディアントゥス・ミラセフィリア・ルミナスティオ!よ!!」


誠人は思わず口を開けたまま固まった。


「……長ぇよ!」


思わず素で突っ込んでしまう。


長々と名乗った妖精は、ケラケラと腹を抱えて笑った。


「そうそう、そういう反応。

前世のあなたも毎回そこで突っ込んでたっけ。

まぁ結局、みんな『リル』って呼ぶんだけどね。


でも希少種族〈アストラル・エルフ〉の名前は代々こうなのよ。

由緒正しいんだからね!」


「いや、由緒ってレベルじゃないだろ……

一息で言えたのは素直にすげぇけど。」


笑い合う空気が、ほんの少し緊張を和らげた。


けれど誠人の胸の奥では、どうしても拭えない疑念が渦巻いていた。


「リル……おまえは、なんで俺を知ってる? 昨日、前世とか転生とか言ってたけど……。」


その問いに、リルの表情が少しだけ引き締まる。


「うん。そろそろちゃんと話さなきゃね。


わたしは、前世で誠人の仲間だったのよ。

戦場でパーティーとして一緒に戦って、一緒に旅もしたね。


でも、これが一番重要なことかな

わたしは……あなたの師匠でもあったのよ。」


「……師匠?」


「信じられない?でも事実よ。

わたしは世界最高峰の魔法使いだった。

いえ、今もそのはずなんだけど……

転生の秘術に巻き込まれた時、力のほとんどを失ってしまったの。

あなたが前世で魔王に敗れ、

最後の賭けに出たとき、わたしも一緒に転送されてしまったのよ。」


誠人は思わず息をのむ。


心臓が強く打ち、脳裏に曖昧な光景がちらついた。


剣を構える自分の姿、隣で魔法を放つ小さな影。


それは幻か、記憶か。


「……前世の俺は、本当に……。」


「ええ。あなたは勇者だった。

正確に言えば、勇者と呼ばれた存在。

魔王と最後まで刃を交えた唯一の人間。

そして、わたしはその戦いに付き合って……

最後にあなたと約束したの。

もしも転生が成功したら、必ず探して連れ戻すって。」


言葉が、胸に重くのしかかる。


今までただの異世界転移かと思っていた出来事は、

実は自分の意思と歴史に根ざしたものだったのだ。


リルは少し頬を膨らませて、誠人の顔を覗き込む。


「ほら、その顔。

真剣すぎるとシワが増えるんだから。

あんまり難しく考えなくてもいいの。

とりあえず――わたしとあなたは前世からの相棒で、

師弟で、今また再会した。それだけで十分でしょ?」


おどけて笑うリルの表情に、誠人は思わず口元を緩めた。


「そうだな.......  うん。ありがとう、リル。」


朝日はすっかり昇り、村に光を投げかけていた。


家畜の落ち着かない鳴き声、畑に立ちこめる薄い霧、

井戸から水を汲んで首をかしげる村人の姿。


小さな異変はまだ続いている。


だが、誠人はもう一人ではない。


前世からの相棒が隣にいる。


その事実が、何よりも心強かった。

第二章から一話分のボリュームを増やしました。


それに伴って、更新ペースも少し時間をいただきます。


何卒宜しくお願い致します m(_ _"m)作者

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