崑崙の仙女伝説
古来よりの言い伝えに『崑崙山の頂上に美しき仙女の住むという』とある。
「どんな仙女だ?」
俺は興味を引かれ、そこへ出かけた。
中国地方、山陰のとある美保関というところにその山はあった。
「これが崑崙山か……」
俺は麓に車を停めると、見上げた。
そこそこ高い。
頂上には一本ツノのような送電線が見える。
頂上まで、俺は登った。
ずっとアスファルトの車道がついていたので、難なく車で登った。
途中、上から下りてくる幼稚園児の群れとすれ違った。遠足だろうか──
空にはトンビがピーと鳴きながら円を描いて飛んでいた。ヒョロロはどうした──
ようやく頂上に辿り着いた。
7分もかかった。
そこそこ広い駐車場にワゴンRを停め、俺は周りを見渡した。
看板があった。
『翔べ!』とぶっとい字で書いてある。
見ると、白い羽衣のような服を着た女性が、そこから翔ぼうとしているところだった。
「待って! もしやあなたが……」仙女かな? と思い、俺が声をかけると──
女性はこちらを振り向き、ニヤリと笑った。
美しいひとだった。
加工されてない美人を久々に見た気がした。
彼女は名乗った。
「わたし、崑崙!」
そのまま顔を前へ戻すと、頂上の大地を蹴り、崑崙は空へと翔んだ。虹色の羽根を広げて──
俺はその背中に見とれながら、呟いた。
「わぁ……。パラグライダー、気持ちよさそうです!」
そのまま彼女は落ちることなく飛び続け、日本海の彼方へと消えていった。韓国まで行ったかもしれない。
あれが……仙女だったのか──?
後日、よく調べてみると、崑崙山は島根県ではなく中国大陸に伝わる伝説の山だということがわかった。しかも『ころん』ではなく『こんろん』と読むらしい。
騙された!
イラストはコロンさまよりいただきました