第1話:泥と美少女の香り
俺、木下藤吉郎(元・龍ケ崎弘彌)は、泥まみれの田んぼを這うように逃げながら、人生最大のピンチを味わってた。
背後では竹棒を振り回す畑のオッサンが「流れ者め、出てけー!」と絶叫中。
足はズブズブ泥に沈むし、腹はグウグウ鳴ってる。
でも、俺の頭はすでに次のステップへ。
「ハーレム築くにはまず飯だ。飯があれば力が出る。力が出れば出世だ!」
朝靄の中、遠くに煙が上がってる集落が見えた。
鼻をクンクンさせると、かすかに炊いた米の香りが漂ってくる。
「うおっ、飯の匂い! 生きる希望!」
転生オタクの俺でも、この状況じゃ米一粒が黄金より貴重だ。
這うように進むと、集落の入り口で若い娘が井戸のそばに立ってた。
その娘、すげえ美少女だった。
麻の着物に身を包み、黒髪が風に揺れてる。
顔は透き通るように白くて、目がキラキラしてる。
まるでラノベのヒロインだ。
水汲みの桶を抱えてる姿が、なんとも色っぽくて、俺の心臓がドキッと跳ねた。
「ま、待て。戦国時代にこんな美少女が!? ねねか!? いや、まだ出会う時期じゃねえか!」
「お前、何だ?」
娘がこっちを見て眉をひそめた。
俺、気づいた。
今、俺は泥まみれで這ってる流れ者だ。
「いや、その、腹減ってて・・・・・・水をくれねえか?」
情けない声で頼んだら、娘が「ふん」と鼻を鳴らして近づいてきた。
間近で見ると、ほのかに汗と花の香りがして、俺の頭がクラッとした。
賢者タイム転生の後遺症か、妙に意識しちまう。
「水ならやるよ。けど、その汚ねえ姿で近づくな」
娘が桶から水を汲んで差し出してきた。
その瞬間、風が吹いて彼女の髪が俺の顔に触れた。
柔らかくて、いい匂いすぎて、俺、鼻血出そうになった。
「うおっ、すまねえ! 美少女の香りに耐えきれねえ!」
「何!? 変なこと言うな!」
娘が顔を真っ赤にして桶を投げつけてきた。
水をかぶった俺は、冷たさに震えつつも「生き返ったぜ…」とニヤけた。
その時、後ろから「藤吉、お前か!」と野太い声。
振り返ると、鍬を持った大柄な男が立ってた。
「お、お前誰だ?」
「誰だと? お前の兄貴、木下弥右衛門だよ!」
マジかよ、史実の兄貴登場!?
兄貴は俺の襟首をつかんで「母ちゃんが心配してんだ、帰れ!」と引っ張っていく。
美少女が呆れた顔で見てる中、俺は「次は絶対口説くぜ!」と心に誓った。