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2.魔女カタリナの逃走

「「「「「放校&追放になったお前が、なんでしれっとやって来とるんじゃーい!」」」」」


 全員がカタリナに突っ込んだ。


 このカタリナ、アルフォンスに横恋慕してさんざんやらかした上に、さらなる力を求めて魔女となっていたのがバレて、先日放校処分を受けたばかりなのだ。

 ちなみに、娘が一線を越えてしまったことを猛省したサン・ラザール公爵は、ただちに縁を切り、自主的に蟄居している。


「姫様ッ 魔女カタリナが湧きました!

 ご対処を!」


 ジュリエットは、アルフォンスを指差したままのジュスティーヌに取りすがった。

 が、手応えがなにかおかしい。

 コルセットに身を包んでいるとはいえ、いくらなんでも()()


 ジュリエットが戸惑っていると、カチリと妙な音がした。


「おーともーどに、きりかえます」


 ジュスティーヌは妙なことを口走ると、ぐぎぎ……とぎこちない動きでジュリエットを見下ろした。


「ジュリエット、今宵こそ婚約破棄させていただきますわ!」


「きゃ! 姫様と私、やっぱり婚約してたんですね!

 んもー、恥ずかしがり屋さんなんだから!

 破棄だなんてナシナシ、今すぐ神殿に行って結婚しましょう!」


 違和感など忘れて、ジュリエットは頬を赤らめて叫ぶが、ジュスティーヌはスルーして、ノアルスイユを指した。


「ノアルスイユ、今宵こそ婚約破棄させていただきますわ!」


「はいい!?」


 ぶったまげているノアルスイユを無視して、今度はサン・フォンを指す。


「サン・フォン、今宵こそ婚約破棄させていただきますわ!」


「ほへ!?」


「ドニ、今宵こそ婚約破棄させていただきますわ!」

「父上、今宵こそ婚約破棄させていただきますわ!」

「ファビアン殿下、今宵こそ婚約破棄させていただきますわ!」

「学院長、今宵こそ婚約破棄させていただきますわ!」

「国王陛下、今宵こそ婚約破棄させていただきますわ!」


 前の予定が押して、ようやくやって来た国王もジュスティーヌの婚約破棄連射に巻き込まれ、なにがなんだかわからないまま、「息子の婚約者に手ェ出しとったんかいワレ!?」と王妃の高速回し蹴りをくらってその場で崩れ落ちた。


「もしかして、魔導人形……?」


 ぼそりとアルフォンスが呟く。


 この世界、人間そっくりの姿かたちをして、ある程度は命令に従って動くこともできる人形を闇魔法で造りだせるのだ。

 闇魔法といえば魔女が得意とするもの。

 そして、この雑さはベテランの魔女の仕業とは思えない。

 たとえば、魔女になりたてほやほやの者が造ったような。


 んじー……とカタリナに皆の視線が集中する。


 バレたか!と、カタリナがこそこそと逃げ出そうとしたところ──


 ぱりん!と天窓が割れて、ホールの中央に向かって人影が飛び込んできた。


斉射フューサレイド!!」


 飛び降りながら大きく広げて突き出した両手、その指の間に一つずつ光点が生み出される。

 光点は放たれると同時にぶわっと膨れ上がり、握りこぶし大の8つの火球が、カタリナを襲った。

 ジュスティーヌだ。


「ちいいいいい……!

 80(エイティ)ふぃーるどッ 全!開ッ!!」


 カタリナは、氷の盾を80枚も一気に展開して身を守ろうとする。

 が、火球は盾を粉砕しながら、カタリナの周りをびゅんびゅん飛び回る。

 あっという間に盾を失ったカタリナは、飛んだり跳ねたりマトリックス避けをしたり、もう必死だ。


 一方、ドレス姿で5点着地をキメたジュスティーヌは素早く起き上がり、アルフォンスや皆をかばうようにカタリナに対峙する。


「ジュスティーヌ!!」


「姫様ーー!」


 アルフォンスとジュリエットが歓喜の声を上げる。

 今、この国で斉射フューサレイドを打てるのは、ファイアボールしか打てない体質であるがために、ファイアボールを超極めてしまったジュスティーヌだけ。

 本物のジュスティーヌだ。


「いったいどこに行っていたんだ、ジュスティーヌ!」


「そろそろ舞踏会の時間だからと出ようとしたら、廊下の真ん中に好物のどら焼きが置いてあって。

 食べようと思って近づいたら、足元が転移陣でしたの。

 どら焼きを持ったまま牢屋のようなところに飛ばされたから、適当に壊して出て参りました」


「「「「「なる……ほど?」」」」」


 いつものことだが、突っ込みどころが多すぎる。


「カタリナ。

 あのどら焼きはどこで買ってきたの?

 はちみつが入っているのかしら、とても美味しかったわ」


 ジュスティーヌは、鬼の形相で火球を避け続けているカタリナにおっとりと微笑みかけた。


「くっそー! 余裕ぶっこきやがって!

 覚えていやがれですわ!!!」


 魔女カタリナは、泣きながら転移陣を開いて、どうにか飛び込んだ。




 後日、アルフォンスは、せっかく婚約破棄されたのだからと、プロポーズをしなおすことにした。

 薔薇が咲き乱れる王宮の庭で華麗に行われたプロポーズは、乙女が夢見るプロポーズそのもので、大々的に絵入り新聞で報道された。

 某帝国の後宮で、新聞を手に「ちっくしょー!」と叫んでいる、やたらカタリナに似た金髪を見たという噂が流れたが、所詮カタリナはよくいる悪役令嬢タイプなので見間違いかもしれない。


ご覧いただき、ありがとうございました!

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[作:アホリアSS様] 「設定投げて! 企画」概要 設定投げて! バナー
― 新着の感想 ―
[一言] いやもう何もかも面白過ぎる!! こういうぶっ飛んだ婚約破棄モノも良いですね!! 私もこういうの書きたい(´;ω;`)
[良い点] あはは! 面白かったです! こーいうの好きなんですよ~(笑) 登場人物みんな明るくて(笑) そして最後はジュスティーヌさんが強さで解決。 楽しかったです。読ませていただきありがとうございま…
[一言] テンポが良くてとても面白かったです! 魔女カタリナが見るからに悪役というか……バイキ○マンみたいな立ち位置で逆に可愛らしいですね笑。 確かにジュスティーヌ、男前! 周りを取り巻く面々もみんな…
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