30歳はまだ若い
ダンジョンのある1階に向かうためにエレベーターに向かって歩いていると前方からスーツを着用した、小柄な女性が歩いてきた。
「あれ?小岩井じゃん。あんたまた『炎鎧』のところにいるんでしょ?いい加減私のとこに来なさいって」
「おはようございます『蜃気楼』。あなたが欲しいのは私ではなく私の『光度増幅』スキルでしょ。あなたの部品にわざわざなりませんよ」
「そんなこと言うなって、あんたが望むならダンジョンのたびに相手してやるって言ってるだろ」
「それもあなたが興奮して寝れないからでしょ。私を巻き込まないでください」
「冷たいな。ところでその坊やが例の?」
小岩井さんの首に腕を巻き付けてからんでいた『蜃気楼』と呼ばれた女性はいきなり、私を猫のような目で嘗め回すように見てきた。
「ええ、安藤さんです。そろそろ離れてください。安藤さんこちらは『蜃気楼』のおばさんです」
巻き付いている腕から逃れ私に紹介してきた。
「ほう。私をおばさんとはよく言ったものだね」
「事実でしょうに、能力を外でも常時使ってる若作りは先に紹介しておかないと、毒牙に掛かると困りますからね」
『蜃気楼』が掴み掛ろうと手を伸ばすが小岩井さんはその手を叩き落とした。
一瞬呆けた『蜃気楼』は次々に手を伸ばしそれを的確に払いのける小岩井さん。
それを無言で数分続けているとあることに気が付いた、小岩井さんが弾かない手があるということと、その手が小岩井さんに触れる瞬間に消えることに。
その不思議な現象を注意深く観察していると、飽きたのか『蜃気楼』が距離を取った。
「こういうことはつまらないね。かわいくないよ」
「別にかわいくは思われたくないので。そろそろお暇していいですか?」
「ああ、今日は1階層での申請してたんだったか。ごめんね安藤君どこかであったら声かけてね」
そういうと、歩き去っていった。
「なんか強烈な人でしたね」
「最初は違ったんですがね。ダンジョンに潜る人間は何かしら壊れるんですよ」
エレベーターに乗り込み1階のボタンを押すとボタンが点灯せず扉が閉まっても動き出さなかった。
「ん?ああ、ごめん伝えてなかった。ここにライセンスを当てないと1階に降りれないようになっているんだ」
慌ててライセンスを取り出して1階のボタンを押しながらよくよく思い出してみると、講習のときに佐藤さんがそのような行動をとっていたような気がするが、同僚と話しながらだったためよく覚えていなかった。
「それでは今日のメインイベントですね。今日はフライングレフトのみを相手にしますので、それ以外は私が処理します」
「はい」
「今回は研究員も居ませんのでスキルの使用はしないでください。レーザー銃のみでの戦いとします。予備の弾倉を確認してください」
「弾倉5つ大丈夫です。充電も満タン確認」
「しょし、それでは行きましょう」
今まで、ある程度の人数で挑戦していたダンジョンに初めて2人で挑む緊張感から足がすくむ感覚に陥られながらダンジョンに潜っていった。
『蜃気楼』はスキル名ではなく異名です。
スキルは特に希少スキルを持っているわけではなくセンスのみで異名を手に入れた特殊な例です。
ある意味女性だからこそ使えたのかもしれません。




