不器用のスキルは不憫すぎる
「それでは、自分が戦列の座に加わったことを知らない者もいるというのかい?」
「そうなります。この書物は国家単位での所持を確認したことはありますが、部族単位になると確認されるのはまれでした。そのため戦列の座に加わった者の中では、加わったことを知らずに生涯を終えた者も居たと記録にありました」
いまだに片膝をついたまま喋るティラントに対し、やっと思考が追い付いてきた私はある質問をした。
「ティラントさんはなぜ私の前に現れたのですか?」
「私にもわかりません。先ほど申した通り、私は戦列の座に加わった時までの記憶しか持ち合わせてない状態でここに現れましたので、その知識は一切ありません」
質問に対する答えを持っていないことが悔しいのか、表情に現れている。
「これは正確に答えてほしいのだが、ティラントは王国の軍団長ということは、王国に忠誠を誓っていたのだよね?」
「はい、軍団長に就任した時に誓いを立てています」
「それなら今、この安藤にはどんな感情を抱いているんだい?例えば忠誠だとか親愛を抱いているのかな?」
「今は主に対して、忠誠心を抱いているのは確かです。そして同時に畏怖を抱いています」
「畏怖?この安藤はとても貴方に敵わないはずだが?」
「そうですね。確かに武力を用いることに関しては確実に勝てるでしょう。ですが、私は主を攻撃しようと考えることができないのです。間接的にでも傷をつけることに恐怖を覚えます。そのことが、感情を制御されているようで、畏怖してしまっています。ただ、主はそのようなことができないのはわかりますので、この畏怖は主に対してというよりも、そのように考えている私に対しての畏怖なのかもしれません」
実際に私が傷つくことを想像したのか顔を青くして体を震わせた。
「ふむふむ、君のスキルは面白いね『カード顕現』なんてよくわからないスキルがどんな能力なのかと思ったら異世界の英雄を呼べるなんて、なんて面白いスキルなんだろね。それにしても付随スキルが『不器用』なんてかなり厳しい制限をかけるスキルだと思ったら、異世界から英雄を呼べるのなら納得だよ。異世界から英雄を呼べる上にさらに君まで強くなってしまったら、ほかの人いらなくなってしまうよね」
そういいながら何度もうなずいていた『研究者』は満足したのか階段へ向かい始めた。
「よしそれでは、入り口に向かって敵を倒しながらティラントの強さを見せてもらうよ。そして、現役の時と違いがあれば教えてくれ」
「よろしいのですか?」
『研究者』の言葉にすぐには頷かずこちらに確認を求めてきた。
「あー今は、『研究者』に雇われている状態だから希望にこたえてくれると嬉しいかな?」
「わかりました。私の強さを見ていてください」
自信満々に先頭を歩くティラントは来るときの『研究者』と同じで何をしたのか全く分からないくらい私よりも強かった。
先に予告しておきますティラントの登場は今回までです。




