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お子ちゃん先生  作者: いけも
6/12

⑥クマヨばあちゃんとトラヨばあちゃん

フロアから喧嘩をしている大きな声が聞こえる。

 百六歳のクマヨばあちゃんと百五歳のトラヨばあちゃんである。名前も“クマ”に“トラ”、動物の名前を付けると長生きするのであろうか。

 喧嘩の原因は洗濯物たたみである。クマヨばあちゃんは几帳面な性格。逆に、トラヨばあちゃんは大雑把な性格である。性格の違いで毎日喧嘩が絶えない。クマヨばあちゃんがトラヨばあちゃんをにらみつける。

「あんたな、きれいにたたみなはいや。丸めてどうするがっ」

 トラヨばあちゃんも負けてはいない。

「毎日、毎日、うるさいばあさんやな。しわくちゃばあさんは、早うお迎えに来てもらいなはいやっ」

 こんな調子である。二人とも車椅子の生活ではあるが、たたき合い、髪を引っ張る、二人とも気が強い。


 気が強くなったのも仕方がない。クマヨばあちゃんの旦那さんは戦死。六人の子供を一人で育てて来た。六人の内、二人は双子。母乳では足らず、おかゆの上澄みをすくっては飲ませていたそうだ。

 戦後、食べる物にも困り、小さい体で男の中に入り土木作業をしていた。朝早くから夜遅くまで、泥まみれになり働いた。背中も曲がっている。まるで三輪明宏の「ヨイトマケの歌」だ。大変苦労したんだ。

 クマヨばあちゃんのような人が戦後頑張って日本を支えてくれたから、今の私たちは幸せなんだ。お子ちゃん先生はクマヨばあちゃんに感謝した。

「クマヨばあちゃん、万歳。万歳、もっと長生きして、いっぱい笑って」

 お子ちゃん先生は、温かい気持ちで温かいお茶をクマヨばあちゃんに飲んでもらった。


 トラヨばあちゃんは、六年前ご主人を病気で亡くしている。息子一人、娘二人いたが子供たちも相次いで病気で亡くなっている。しかし、トラヨばあちゃんは夫も子供も元気でいると思っている。身近な世話は孫たちがしているのだが、その孫の一人を夫だと思っている。孫に向かって言う。

「父ちゃん、もうそろそろ稲刈りやな。忙しいけん、清水のじいに手伝ってもらいなはいや」

 清水のじいもとっくに無くなっている。孫は否定することなく、

「清水のじいには言うとった。手伝いに来てくれるって。心配せんでいいけん」

 と優しく嘘をついた。この優しい嘘でトラヨばあちゃんは安心できているのだ。


 


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