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当日

 凄いな。

 壮観だな。学校。

 学校のこと砦だって言ってる人がいたけど、そんなに砦に見えない。少しそれっぽい要素があるだけで、基本的には大きい建物だ。もちろん、学校って言っても平民に文字を教えると言われる平民用の学校にも見えない。

 僕の屋敷に比べたら、そんなに豪華じゃないけど、でかい。

 ここで、鬼ごっこや隠れんぼしたら楽しそうだな。ずっと逃げられそう。


 周りにいる人達も皆んな制服を着てるから不思議な気分になるな。こんなに多くの人と服装が被ったことなんてないからな。

 でも、よく見ると結構分かるな。

 例えば、筋肉質で姿勢が良くて周りを見てる人は、騎士見習いかな。とか。男の制服を着ている女の人は、何か訳があるのかな。とか。キョロキョロして、汗をかいてる人は平民が不安を感じてるのかな。とか。

 面白そうな人が多くて、楽しみにだな。仲良くできるかな。


 

***



 入学式。


 それなりの椅子に腰掛けて壇上に上がったおっさんの話を聞く。

 学校長は貴族相手に教育をするんだし、それなりの地位があるのかな。王立の学校だし、暇な王族の系譜の方かな。目付きが緩い。適当そう。あの人がトップなら、何しても許されそうだな。

 現に初等部からいたっぽい人達は、ずっと友達と話して、学校長の方を気にしてない。っていうか、初等部からの人達が、思ったよりずっと多い。

 

「えー。ゴッホん。…私が学校長のビィズロルハです。この場所では、身分は関係ないものとしますので、身分を気にせず学校生活を楽しみにしてください。なので、私の家名を明かしません。こんな機会はこの先もうないでしょう。部屋も狭く使用人も少ないここでの生活を苦痛に感じるのではなく、新しい経験を得られる楽しい場所だと感じてほしいです。以上です。」


 なんか、可哀想に見える。壇上に上がったのにざわめきが止まないから、気付いてもらえるよう咳までしたのに、ざわめきはおさまらなかった。

 それで、心が折れたのか、早口に最低限だけ言って帰ってった。背中に哀愁が漂った中年にしか見えない。哀れ。

 教師達は端っこに立っていた。そこに戻っていった学校長。

 教師達のうち数人は戦う者に見える。教師は警備員とは別に警護の役割もあるのかな。平民とかは露骨な警備員がいる中で落ち着けないからかな。

 



***



 

 僕がパーティー会場に入ろうとしたら、警備に止められた。

 どうやら僕が固有魔法を使って外見を変えていたから、チェース・アルレキーノだと分からなかったらしい。

 仕方ないから、固有魔法をといてパーティーの中に入ってから、また固有魔法を使った。


 融通のきかないやつだったな。僕は固有魔法を隠してないから調べれば分かった筈なのに、固有魔法を一回解かせるなんて。

 因みに、固有魔法は魔力を使うからなんとなく見れば分かる。だから僕が風景に固有魔法を使って擬態していても、なにもないのに魔力だけが見えて警戒させてしまう。だから、透明人間にはなれない。


 もう、殆どの人達が来ていて談笑をしているようだ。僕は警備員に止められていたから少し遅れてしまったようだ。

 さっき、気になった人達のもとに行こうとしたら、何やらもっと面白いことになった所があるみたい。


 パリンッ


「す、すみませんすみません。」


「なにすんのよ!随分巫山戯た真似してくれたわね、平民。どう責任取ってくれるのかしら。」


 あれ?ミシェル・マラガレータかな。

 金髪碧眼で気の強そうな顔立ちで、変なグルングルンの髪型。美人でスタイルがいいなあ。赤いドレスが似合っていて凄くいいな。

 相対してるのもピンク色の髪に緑色の目をした可愛い系の顔立ちで制服を着ている。

 どうやら、平民がシャンパンをドレスにぶちまけたらしい。

 これじゃ、この後のパーティーが両者共々楽しめなそうだ。周りに殿下も見受けられないし、僕が助けてあげよう。


「ちょっと、いいかい。久し振りだなミシェル。」


「なに、ヒッ。」


「これで、どうだい。後、そのドレスは似合っているけど、もっと平民に親しまれるような服装じゃないと。教養がないみたいに思われてしまうよ。ここは僕に免じて怒りをおさめてくれないかい。」


 ミシェルのドレスに僕の固有魔法で全く同じ見た目の生地を重ねて見えなくした。

 これで、見ただけじゃ濡れてるのかわからない。


「そ、そうね。ありがとう。もう怒ってないから、早くどっかに行ってくれないかしら。早く。」


「そ、その。助けていただきありがとうございます。」


 やっぱり、ミシェルは優しいな。あんなに怒っていたのに、久し振りにあった僕の顔をたててくれるなんて。

 そうだ。僕が居なかった間の殿下との仲でも聞こうかな。


「怒りをおさめてくれて良かったよ。君も気にしなくていいから。折角のパーティーが台無しになっちゃうからね。そうだ、旧交を温めようじゃないか。そう冷たいことを言わないでくれよ。」


「いやよ。そもそも貴方誰よ。気持ち悪い。」


「おい!この騒ぎはなんッヒ。だ、誰だお前!」


「あれ?殿下ですか。久し振りです。今ミシェルと話してたんですよ。殿下も一緒に昔話にでも花を咲かせませんか。」


 あれ?殿下の表情が険しいな。婚約者(ミシェル)を呼ぶ声色じゃないなぁ。仲が悪くなっちゃったのかな。


「ミシェル!誰だ、この気持ち悪いやつは!」


「し、知らないわよ!そのキモイのに説明させればいいじゃない!」


 まさか。忘れられた。公爵家の者なのに。

 いくらなんでも酷いな。


「え。もしかして、忘れちゃったの?イメチェンしたから?ほら、僕だよ。あのボーっとしてたチェースだよ。あの頃からは考えられないぐらい男前になったでしょ。丁度みんなと会わなくなった頃に卑屈になることを辞めたんだ。」


「え」


 え。何、その反応。3人だけでなく、様子を伺ってた周りも、ざわついた。

 ミシェルは違う!と不満げに。殿下は信じられなそうに。平民はありえないものを見るかのように。三者三様の反応を見せた。

 ミシェルも殿下もポーカーフェイスが崩れていて、面白く感じた。やっぱり他人の表情や態度が大きく変化するのは見ていて面白い。




お読みいただきありがとうございます。

違和感や変な所があれば、指摘した頂ければ、嬉しいです。


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