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殴ってやった。親子の談笑。


 次の日の朝食。


 僕は、この時、この機会が待ち遠しかった。

 僕は、この父様を殴る気持ちの昂ぶりが、最高潮に達っしているのを自覚している。

 きっと、この機会を逃したら、気持ちが萎えてしまう。自分が悪いのを自覚しているから。


 尋ねる必要の無いことを尋ね、夕食が気まずくなって、父様が酒を飲み過ぎて、悪酔いする可能性があることを少し考えれば分かっていたことだ。

 全ては、あの時傲っていて、調子に乗っていた僕が悪い。そのはずだ。そうじゃないと、やってらんない。父様は、親としてどうかと思うが。


 しかし、今ならこの昂ぶりに任せて、殴ることが出来る。あのニヤケ顔を。

 昨日の僕は、血迷っていた。一瞬でも、あの父様を何時も余裕があって、優美に感じた、なんて。

 断じて違う。あの父様の顔や態度、雰囲気は、なにも考えていない、間抜けの阿呆がするものだ。

 一晩経って、物事を客観的に冷静に捉えて、考えることの出来る僕がそう感じたのだ。間違いない。


 そう考えていたら、家族が食堂についたようだ。挨拶をしていた。挨拶は大事だ。

 挨拶が終わり、食事を始めようとするのを、僕が止めた。


「では、神に感…」


「少し待ってくれ。この場を借りて、まず、謝罪したい。兄さん、いやお兄様。この3年間、何かある度に突っかかってしまい、ごめんなさい。今では、こんな僕に変わらずに優しくしてくれたお兄様のことを、尊敬しています。本当に、ごめんなさい。」


「いや、いいんだ…。いや、ホントは、ウザかったけど、反省したのなら、許すよ。大した影響もなかったし。ずっと、言いたかった事があるんだ。もう気づいているかもしれないけど」


「なに?僕は本当に失礼なことをして、迷惑を掛けたんだ、何でも言って下さい、お兄様。」


「ごめんね、俺が天才で。チェースと比べると何もかも僕が雲泥の差で勝ってしまって。俺は、チェースみたいな経験したことないからさ。偉大過ぎる兄がいると、どう感じるの?教えて。どんな気持ちだったの?」


 お兄様に対しての謝罪が終わった。謝罪するまで、それなりの罪悪感はあったけど、気にしてないようだし、よかった。


 僕は、意を決して、立ち上がり父様の前まで歩いた。お兄様がなんか、おっしゃられていますが、今はそんなことにかまってられない。

 父様は、相変わるず、余裕のある顔(マヌケヅラ)でふてぶてしくしていた。



「ねぇ、無視?俺の質問は?あれ?聞こえなかった?しゃうがないね。まったく。チェースは、あんまり頭が良くないんだから、人の話はしっかり聞くんだよ。ごめんね、俺が天才で。チェースと…」



「父様、言いたいことがあります。僕がこの3年間感じていた劣等感は、全て父様のせいです。」


「急に何を、言い出すんだ。寝ぼけているのか?」


 やっぱり、あの夜のこと忘れているのか。許せん。

 もし、思い出していて、謝るんなら9割の力で許してやろうと思ったが、やめだ。

 もう、いかしておけん。

 刮目せよ!僕のフルパワーに!


「喰らえ。酒は程々にしろー!」


 ガキンッ!


 痛い。めっちゃ痛い。え…どういうこと?

 ヤバいけど、何とか声を漏らさずにいけた。流石に情けな過ぎる。

 八つ当たりで、壁を殴った時より、痛い。

 あ、もう嫌。涙が出てきちゃった。最悪。


「あ~びっくりした。どうしたんだよ。チェース。急に殴ってきて。思わず、固有魔法使っちゃったじゃん。手、痛いでしょ。次からこんなことしちゃ駄目だぞ。暴力は何もうまないからね。やってはいけないよ。その為に神は、人に知恵を授けたんだから。会話で分かり合わないと。あと、貴族は、酒を嗜むのも義務だからね。父様は、そんなに酒を飲みたくないんだけどね。飲まなくちゃいけないんだ。ただ、飲むからには味わう必要があるから、遅くまで飲んじゃうんだよ。あぁ、だから父様が何時も酒を飲んでいるように見えるんだよ。 朝食が遅くなっちゃうから、もう食事にしよう。」



「…ース。親を殴るなんてして、結局、父様は涼しい顔のまま、説教されてさ。その上、殴った手が痛くて泣くなんて。俺には、到底想像つかないんだけど、どんな気持ちなの?そもそもさぁ、…」



***



 あの後、父様と会話をした。説教についてや、僕が殴った理由なんかを話した。


 僕は食事を済ませて、僕の部屋に戻った。


 忘れていた。信じられない。僕は、またしても、冷静に考えられなかったのか?


 父様の固有魔法は、『何かを硬くする』能力だった。よく、酔っ払った父様が自慢げに貴族として、この魔法は当たりだって、家族や使用人に絡んでいた。


 固有魔法かぁ。今の僕は使えるのかな。もう8歳になっているし、使えるか。


 絶対に、父様を殴る…いや、吠え面をかかせる。殴ると痛そうだ。


 僕は父様との会話で、分かったことがある。

 会話で分かり合える問題なんて無い。

 父様は、まだ幼い子供に暴言を吐いたことをまるで反省しなかった。

 


お読みいただきありがとうございます。


アレッサンドロは、元々煽るのが好きなだけで、普通の人です。ただ、3年間ずっとウザくて面倒くさかったから、煽れる時に煽ってるだけです。

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