マハム
冒険者ギルドの裏にあった広場には大きな鉄板や、井戸があった。町のイバント会場のようだ
マハムはてきぱきと料理の準備をして、ジャイアントボアの肉を焼き始めた。
「マハムは村でも一番の料理人だ。あいつの作る料理を食べたら他のものは食べられないぞ」
元盗賊団ボスのケイがマハムの料理をべた褒めしている。
シンはこの世界に来て本当においしいものにありついたことはない。香辛料もない世界では仕方のないことかもしれない。
朝食の件もありシンは全くケイの言葉が信じられないでいた。
「それは楽しみだ! わーい わーい!」
イオは子供のようにはしゃいでいる。
魔物に囲まれて緊張の中で旅をしているシン達にとって、久しぶりの、のんびりした雰囲気である。
「さあ、できたぞ! どんどん食べてくれ!」
マハムは、ジャアントボアの肉を500グラムほどに切り分けて、食べやすいように皆に配った。見た目はとてもおいしそうだ。
「では、食べるか・・・・」
シンは、あえて期待せずに肉を口にした。
「う、うまい! うーーーーーっ」
「がぶがぶがぶ」
1口食べたシンは、感動して泣きながら肉を貪り食べた!
ジャイアントボアの肉はもちろんうまい。だがそれだけではない。
このうまさは前世の高級ホテルで食べたシャトーブリアンのステーキ肉を超えている!
「お、お代わり!」
シンは一瞬でさらにあった500グラムの肉をたいらげ、お代わりの肉を頬張った。
「んーっ、うまい!」
「ガツガツガツ」
「ガブッ、ゴクッ」
他のメンバーたちもジャイアントボアの肉に夢中である。
10キログラムあったジャイアントボアの肉は1時間ほどですべてなくなった。
冷蔵庫のない、この世界では生肉はすぐに食べないとだめになってしまう。それでも2日くらい分くらいは想定していた肉を1食で食べきってしまった。
シン達はたらふく食べて皆広場で、大の字になって寝転がっている。
「マハム、お前の料理はただ肉を焼いたわけじゃないだろう! どうしてあんなにうまいんだ?」
シンは大の字になって空を見ながら、料理を担当したマハムに尋ねた。
「ああ、ハーブを使ってるからかな! どの国でも料理はただ焼いたりにたりするだけだが、オレはそれを物足りないって思っていた」
「だから、オレは山や、草原に生えている植物を研究していろいろな料理に使ってみたんだ」
どうやら、マハムは料理の味を探求するため、常に努力を重ねているようだ。
「マハムは、私たちの村が唯一自慢できる男だ!」
ケイはシンに自分の事のように伝えた。少しイオを見ているようだ。
「マハムはおれたちのパーティの宝だ!」
シンは今後の料理はすべてマハムに任せようと決心したのであった。