朝の戦い
朝が来た!
シンは楽しみにしていた朝食を食べに1階の食堂にやってきた。
他の者たちはまだ寝ているようだ。
シンが食堂のテーブルに着くと昨日の小人族の老婆がスープとパンを置いてくれた。シンは少し少ないなと思ったが、朝食であるし、こんなものだろうと納得した。
「うっ、まずい!」
スープを一口飲んだシンは、思わず固まってしまった。
シンは、ゴブリンだったころ、木の皮のスープを日常的に飲んだりしていた。ある程度まずいものには耐性がある。
そんなシンが二口目を飲む勇気がなった。
「スープはだめだ! きっと今日のスープは何か異物が入ってしまったんだろう」
「そうだ、おれにはパンがある! このパンを食べよう」
シンは大きな期待をもってパンを口に運んだ!
「ガリッ」
か、かたい。固いが頑張って食べるぞ!
シンは歯がかけそうだったが、力いっぱいパンをかみ切った。
かみ切った後は、ひたすら力いっぱい租借した。
味がパンからじんわりと染み出てきた。
「うーーっ!」
スープ以上にまずかった。これを飲み込んではいけない。シンはそう思ったが他に客がいない食堂の中で老婆がずっと見ている。
シンは死を覚悟して口の中のパンを飲み込んだ。
「はあーーっ」
何とか死ぬことはなかった。ほっとしたシンが改めて食堂の中を見渡した。誰もいない。
そういえば、シン達以外にも宿泊客が何人かいたようだが、食堂には誰も来ていない。皆これを知っているから誰も来ないのだろう。
「今日は朝食食べにくる客が少ないから、お代わり自由でいいよ」
老婆はそういいながら、シンのスープの皿を大盛にして、パンを5個追加していった。
「死んだー」
それからシンは老婆の視線を感じながら地獄の1時間を過ごした。
なんとか朝食を完食し、ふらついた足取りでシンは再びベッドについた。シンの人生で最も過酷な1時間であった。
他のメンバーは、まだ寝ているようだった。
シンが朝食との戦いを終えてから1時間がたったころ、他のメンバーも目を覚ましだした。皆疲れているのか眠り込んで朝食の時間に間に合わなかったようだ。
今日は魔石を売りに冒険者ギルドに再びいかなければならない。皆、シンが起きてこないので、通りで体を動かしたり散歩をしりと、それぞれの時間を過ごしている。
昼過ぎになって、ようやくシンは目を覚ました。部屋の中には誰もいない。シンは装備を整え、階段を下りた。
そこにはシンを待って、時間を持て余したシュバ達8人が階段を下りてくるシンを見ていた。
「遅い! お前いつまで寝てるんだよ」
シュバがハンギレでシンに怒鳴った。
「お、お前たち、朝食食べなかったのか?」
シンは心配して皆に尋ねた。
「ああ、起きるのが遅くて食べられなかった! お前も遅いから食べられないぞー」
「腹減ったのか」
シュバがシンの問いに答えた。
「いや、食事はしばらく後でいい・・・・」
シンはどっと疲れを感じて肩を落としたのだった。