にやにや
ケイをはじめとした元盗賊6人を仲間にしたシンたちは、次の町に向かって歩き出した。
シン達は魔石を小さな袋にわけて、それぞれが少しずつ運ぶことにした。
「お前たちを、信用しているから、裏切るんじゃないぞ!」
シュバは小柄な男に声をかけた。
「はい! 私たちも、いつまでも盗賊なような生活を続けたくはなかったので、感謝してます!」
この男の名は、トシ。すでに初老にみえる彼は自分たちの事をシンたちに語り始めた。
「私たちはもともと小さな村の同郷のものです。村に闇が現れてから魔物があふれ、住むことができなくなってしまったのです。」
「幼馴染同士で盗賊になったのかー」
イオが持っていた竹やりでトシをツンツンしてからかった。
「戦える者たちは冒険者になったり、他の町に知り合いがいるものは移住したりしたんですが、我々は知り合いもいなくて弱いため途方にくれていたんです。」
トシは涙ながらに語った。
「そんな時、ケイ殿が我らに声をかけてくれたのです。」
「嬉しかった!」
「私たちは、1人じゃないと実感できました」
トシはイオの竹やりを払いながらもしっかりと話した。
「なるほどなー、弱いっていうけどお前らの職業は?」
シンはなんとなく気になってしまった。
「それが、私たちは、冒険者登録もしてないですし、鑑定もしてないのでわからないです」
ケイが話に入ってきた。
「町についたら、冒険者登録に行くぞ!」
仲間にした以上、活用できる職業についてほしいとシンは考えていた。
「まさか、盗賊しか選べないってことはないよな・・・・」
シンは少し不安であった。
町までは間もなくである。シン達9人は疲れながらも最後の気力を振り絞り歩を進めていた。
「もうすぐ町だ、みんな頑張れ!」
シュバが声をあげた。
「ちょっと待て!」
シンは皆を突然、制止!
「ドドドドドドドドドドッ」
街道横の木々の間から、ジャイアントボアが現れた。
体長3メートルはあるいのししのような魔物である。
「くそっ。こんな時に!」
シュバがため息をついた。
「いやっ、グッドタイミングだ!」
シンはうれしさでにやにやが止まらないようだ。
「あれはジャアントボアだ! あいつの肉はうまいし、高く売れるぞ!」
シンはシュバにウインクした。
「なるほど、そういうことか!」
シュバもシンの顔を見てにやにやした。
どうやら、町の近くで現れたジャアイントボアを狩って町まで運ぼうということらしい。