シュバの魔法
「おう、シンどうする? にげるか?」
シュバは、戦わずに逃げることを考えている。確かに勝てない相手の場合、逃げることは決して恥ではない。
「いや、おれたちでは、こいつから逃げられない! 背を向けた瞬間に全滅だ!」
あまりにステイタス差がある相手から逃げることは、戦って勝つことよりも難しい。
「とりあえず、できることをやろう! オレは魔法が使えない! まずはシュバの魔法で攻撃する。 ひるんだ瞬間にオレが斧で攻撃する」
レベル1のシンたちにできることは多くない。できることを精一杯やるしかないのである。
「それでシュバはどんな魔法が使えるんだ?」
この戦いの大勢を決するのは、シュバの魔法である。その魔法がどの程度サーベルタイガーに効果があるのかは未知数だ。
「ブラックボールとストーンクラッシュだ!」
シュバは自慢げに答えた。
「ブラックボール? なんだそれは」
シンはいぶかしげにシュバに尋ねた。
「しらん。まだ使ったこともない!」
シュバはさらに胸を張った!
「はぁー、とりあえず使えそうなストーンクラッシュだな」
シンはあきれながらシュバに伝えた!
「よし! ストーンクラッシュ!」
シュバは手を伸ばし念を込め唱えた。手の平から石礫5粒が発生し、サーベルタイガーに向かって飛んでいった。
「おおっ!」
シンはシュバの魔法を初めて見て興奮してしまった!
「カン カン カン」
シュバの放った石礫は見事サーベルタイガーに命中した!
「がるるるるーーーー!」
サーベルタイガーは怒り狂って、今にも飛びかかってきそうだ!
「おい、怒らせただけで全くダメージがないみたいだぞ!」
シンは期待が大きかっただけに、かなりがっかりした。
「ダメだと思うが、もう一つの魔法唱えろ! オレはその後攻撃する!」
「くそ―っ、こいつ頑丈だな」
シュバはストーンクラッシュが全く効果がなかったことに自信を無くしていた。
「ブラックボール!」
シュバが唱えると手のひらの上にテニスボール大の黒い球体が現れた。
「なんだ、これ?」
シュバは黒い球体をまじまじみていた。
「おいおい、またかよ!」
シンは先ほどに続いて、全く使えなさそうなシュバの魔法を見てがっくり肩を落とした。
「がるるるるうーーーー!」
ついにサーベルタイガーがシンたちに向かって飛びかかってきた!