冒険者誕生
新連載「水の家」を開始しました。こちらもよかったらご覧ください。
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無事冒険者登録をおえて、三人は冒険者ギルドを後にした。
「まずは腹ごしらえだな」
シンたちは、冒険者ギルドにほど近い食堂に来た。ギルドに近いということもあり客層は冒険者風の人が多く、昼だというのに酒を飲んでるものも少なくなかった。
「これで今日から俺たちも冒険者!」
シュバは興奮して、すぐにでも魔物と戦いたいといった雰囲気だ。
「だけど、シュバ! 司祭や聖騎士になって家を継がなくていいのか!」
シンはシュバの本当の気持ちが知りたかった。
「いいんだ! 昔ならいざ知らず、あの闇が世界を覆ってからは人が安心して住める場所はほんの一部になった。 そんな一部の土地を特権階級が支配してる」
シュバはこぶしを握り締め熱く語っていた。
「それはオレの家も同じだ。 オレはそんなかっこ悪い生き方はしたくない! 魔族を滅ぼして、みんなが笑って暮らせる世の中にする!」
「そうか、わかった! もう何も言わないよ」
オレは静かにうなずいた。
「イオはどうなんだ! 魔物と戦うの怖いって言ってたじゃないか」
シュバは半笑いでイオに尋ねた。
「ははは! いつまでも昔のおれだと思うなよ! ステイタスの数値は忘れちまったけど。オレは魔物使いだ! つまりすべての魔物はオレの手足として働くしもべなのだ!」
イオは高らかに笑いながら応えていた。
興奮気味に3人で話していると、先ほど注文した料理が運ばれてきた。何の肉かはわからないが肉の塊と固いパン、それにヤギのミルクだ。
ゴブリン時代をいれると、この世界に来て11年になるが、この世界に来て一番の不満は食だ。ゴブリン時代の木の皮のスープは論外としても人間界の食事も決して満足できるものではない。
食事といえば、ただ焼いただけの肉や魚、大きさや形は色々あるが歯がかけそうな硬いパン。料理を味わうという感覚ではなく腹を満たす行為という感覚である。
鑑定でも人だと見とめられて、名実ともに人間になった今、シンは食事を改善することを人生の目標の1つに定めていた。
シンたち3人は今後の活動について話し合うことにした。
「やっぱり冒険者といえばダンジョンだよな」
イオがミルクを片手に勇んでいた。
「ダンジョンもいいが、男の憧れとしてはドラゴン討伐だろー」
シュバが肉を口いっぱいにほおばりながら、夢を語った。
「ダメだ! こいつらに任せてたら、確実に死ぬな!」
シンは自分がリーダーになることを決心したのだった。
「ダンジョンもドラゴンもない! おれたちはレベル1なんだぞ!」
「まずは装備を確保し、経験を積んでいくことからだ!」
「ええええーッ!」
「シンは固いな」
二人は不満そうだった。
「それに金を稼がないと、装備も買えないぞ!」
そう、シンたちはお金がなかった。シュバの家は闇が世界を覆ってからというもの、領地に魔物があふれ、使用人たちを含めた日々の生活をするのがやっとであった。
「シン、わかったよ! まずはこの近くの弱い魔物を討伐しよう」
そういうとシュバは立ち上がったミルクを一気に飲み干した。
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