長い計画
「なっ、なんだ!」
ノブはガリウスの突然の子どものような態度にあきれ返った。
「シャリーンがいないこんなところに用はない!」
ノブはシャリーンの生まれ変わりの妹の遺体を抱き上げて、洞窟をでていこうとした。
「またんか! 人間!」
ガリウスはおどろおどろしい声でノブを呼び止めた。
「ああ、約束か! なんだ!さっさと言え!」
ノブは面倒なことはさっさと済ませようと思った。
「では、約束を果たしてもらうことにする」
ガリウスがそういうと、ノブの体は闇に包まれた!
「うっ、うわぁあああああああああああああああああああああああああああああっ!」
ノブを激しい痛みと、頭の中をかき回されたような精神的な苦痛が同時に襲った!
「な、何をするっ!」
ノブは立っていることもできずに、膝をついた!
「何でもすると約束したのは貴様だ。その契約により私をお前の体をもらうことにした。お前は今よりこの魔神ガリウスの憑代になるのだ!」
ガリウスはノブの体を奪うという。
「な、なにっ!」
ノブの精神は今にも消え入りそうだった。
「わたしの憑代になることができる者など、なかなか現れなかったが、シャリーンがそなたを連れてきてくれた、あやつを魔王にした甲斐があったというものだ!」
「わははっははははっはっはははははははっ」
ガリウスはこの上ない幸福感に浸っていた。
「まさか、この日のためにシャリーンを魔王に・・・」
ノブは精神支配に精一杯の力で耐えていた。
「そうじゃ! 800年前に立てたワシの計画だ!」
ガリウスはしみじみ語った。
「そなたが勇者として生れ落ちて以来、何度もシャリーンに殺させて肉体を昇華させていった! 今回のそなたはわしの憑代にふさわしい肉体で生れ落ちた」
「嬉しかったぞ!」
「・・・・・・・・」
ガリウスは長い日々を思い起こしていた。
「十分に成長したお前を確認して、ミノスを使ってシャリーンを殺害した!」
「お前は思い通りに、あの島に来てわしと契約したというわけだ」
ガリウスは感慨にふけっていた。
「ゆ、許さんぞ――――――――――――――っ」
ノブは最後の力を振り絞って立ち上がった。
「あの忌々しい神にあんな島に閉じ込められて数千年、やっと自由になれるぞーーーーっ」
ガリウスはノブのことなど、気にもしてない様子だった。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ」
ノブは闇に向かって大剣を振りかぶった。
ノブの剣は、闇をすり抜けた。
「があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
次の瞬間ノブの精神は、ガリウスによってかき消された。
「ドサッ」
ノブは受け身も取らずに地面に顔から倒れた。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「よいしょッ」
倒れていたノブは突然元気に立ち上がった。
「おおっ! これが生身の肉体か! とうとうやったぞ!」
ノブの肉体はガリウスに奪われた。
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