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謎の男

 シンは洞窟の最奥に向かって走った、走った!

途中、あちこちに見慣れたゴブリンの死体が転がっていた。その中にはやはり母も妹もいなかった。


「ザザッ!」

 シンは洞窟の奥にたどり着いた!



「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 そこには見慣れない男がまだまだ叫んでいた!

 シンはこの男を知らないが世界で最も有名な人類であった。

 大勇者ノブである!


 ノブの手には背丈はあろうかという大剣が握られていた。その刀身にはゴブリンのものだと思われる血がべっとりとついている。


「この男がみんなを殺したのか!」

 シンは身構えて、唯一持ってる小刀に手をかけた。


「えっ!」

 次の瞬間、シンは腰から砕けてしまった!

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああっ」

 今度はシンが大きな声で叫んだ!


 そこにはシンがこれまで探しに探していた母と妹が転がっていた!

 母は頭から真っ二つに両断されていた。その横に転がっている妹は首のところで頭と胴を真っ二つにされていた。さらに見知らぬ男は妹の胴と切り離された妹の頭に足をかけていた。


 ノブはシンの大きな叫びで我に返って振り向いた。

「んっ? 人間か。 どうしてこんなところに・・・・?」

 ノブはシンが人間だとわかると、シンに全く興味を示さずに、あたりを探し回り始めた。


「こいつが! こいつが、母と妹を・・・・!」

「殺してやる! 絶対に殺してやる!」

 シンは1年という短い時間ではあるが、この世界に転生してから育ててもらった母との数少ない思い出を思い返していた。そしてすっかり大人になった妹の頭に足をかけている男に怒りが抑えられなかった。妹の顔はやはり、醜いゴブリングリードであった。シンは怒りながらも、どこか冷静に妹の醜さが残念だった。


「貴様―――――――――――っ!」

シンは小刀を手に握りしめノブに飛びかかった!


 ノブは小さなシンのことなど、気にもかけずに軽くシンを振り払った!

 

「うわーーーーっ」

 シンは数十メートル吹き飛ばされ、壁に打ち付けられた。

 シンはすでにボロボロであった。


「お前、混じってるな!」

 これまで全くシンに興味を示していなかったノブは突然すごい形相で振り返った。


「消えろ!」

 ノブは大剣を振りかぶってシンに切りかかってきた。


「うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」

 シンはすでに動くことさえできずに、ただ叫ぶことが精いっぱいであった。


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