死体
二人は腰を抜かしてひどく震えながら固まっていた。
「なんで、どうしてミハエルが! あの最強のゴブリンの・・・・」
シンは徐々に落ち着きを取り戻しつつあった。
「わあああああ! おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
イオは相変わらず泣き叫んで鼻水と涙を垂らしながら、おしっこも漏らしていた。
「そうだ、母さんと妹のジェニファーは無事なのか?」
シンは我にかえって、さっそうと立ち上がった。
イオは相変わらず漏らしたおしっこの上で震えている。
「バタバタバタ」
シンは走り出した!
広場にたどり着いたシンは再び凍り付いてしまった。
広場はあたり1面血の海だった。そこには数十体のゴブリンの死体があちこちに転がっていた。
「・・・・・・・」
シンは声が出なかった。本当に驚いたときは声を出すこともできないのである。
シンの脚はガタガタ震えている。いつの間にかシンの目からは涙があふれていた。
涙を流しながらもシンはあたりに転がっているゴブリンの死体を確認して回った。どの死体もきれいにすっぱりと切られていた。ほとんど抵抗することもなく一刀両断されているようだった。
「母さんは・・・・妹は・・・・」
シンは声にならない声を出して二人の姿を探した。
「ああーーーっ」
シンは再び声を発した。
そこにあったのは母でも妹でなかった。
シンのよく知るゴブリンが胸の部分で一刀両断されていた。
「ナンシーさん!」
そう、シンの憧れの女性ゴブリン、ナンシーであった。
彼女の目は見開いたまま、おそらく自分がどうなったかわからない一瞬で殺されたのだろう。
シンはナンシーの目をやさしく閉じ、両手を合わせて冥福を祈った。
「いったい何があったんだ・・・・」
シンはしばらくナンシーの前でたたずんだ後、再び広場の死体を見て回った。
「母さんも妹もこの大量の死体の中にはいなかった。まだ無事なのか。他の部屋にいるのか?」
シンはさらに洞窟に広がる小部屋を見て回った。どの部屋にもゴブリンの死体がいくつも転がっていた。どの死体も一刀両断に殺されていた。
死体にも少し慣れて落ち着きを取り戻していたシンは各部屋のゴブリンの遺体の冥福を祈りながら母と妹を探し続けた。
「そうだ、あの部屋かもしれない!」
シンは自らが1年過ごした薄暗い部屋のことを思い出した。
「ダダダダッ」
シンは駆け出した!
「母さん!」
部屋に入ったシンは母を呼んだ!しかしそこには母も妹も他のゴブリンもいなかった。
「おかしい! どこに行ったんだ! 洞窟から逃げ出したのか?」
シンが頭を抱えていると・・・・
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「やったぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
洞窟の最奥から聞き覚えのない叫び声が聞こえた!
シンは次の瞬間かけだした!!!!