ナビゲーター
港町まであと1時間ほどという時にイオはシンに尋ねた。
「ところでシン、お前はどこまで行くんだ?」
「ぼくは大陸の端の洞窟に向かってます」
シンはゴブリンの件は伏せて、詳しい洞窟の説明をした。
「なるほど、そこに行くには船で洞窟の近くの町まで行って、そこから馬車を借りて数日、山に入ってからは徒歩で10日といったところだ」
イオは道のりに詳しいようだ。
「そこで話だがシンよ、お前が一人で舟に乗って馬車を借りるのは無理だろう。お前は少なからず金貨を持っているらしいから、オレを洞窟までのナビゲーターとして雇わないか」
シンはイオの提案にまた、ぼったくりに会うのかと警戒心を強めた。
「心配するな! オレの雇賃は金貨5枚ほどでいいよ。船代や馬車代は持ってもらうがな」
シンは心からほっとした。宿屋の一件以来、人が信じられなくなっていた。
「それならイオに頼みたい。よろしく頼みます」
シンは右手をシンに差し出した。
「よろしくな、小さな雇い主さん」
こうしてシンとイオの洞窟までのナビゲート契約は成立した。
まもなくシンとイオは港町に到着した。
「おお、ついたな! じゃあさっそく舟のチケットを買いに行くか」
二人は定期船のチケットセンターに向かった。チケットセンターには長い行列ができていた。二人は行列の最後尾に並んだ。
「おいシン、この列に並んでいたら、おそらく今週の舟のチケットは買えない。ちょっと高くなるがオレに任せてくれないか」
シンは迷ったがここで無駄に時間をとられるわけにはいかないため、イオに任せることにした。
「わかったよ、イオ!ただし余分にかかってもいい金貨は5枚までだ」
シンはイオにくぎを刺した。
「大丈夫、そんなにかからないよ」
そういうとイオは列から抜け出しどこかへ消えてしまった。30分ほどでイオは戻ってきた。
「明日の便がとれたよ。」そういうとイオは2名分のチケットとお釣りの金貨4枚をシンに手渡した。
「え、これだけでよかったの?」
シンはイオを少し見直した。
二人は明日の舟の時間まで休むため、宿屋をとることにした。シンは宿屋探しには、いやな思いしかないため、憂鬱な気分であった。
「シン、ここにしようぜ!」
イオはそういうと宿屋の主人と宿賃の交渉を行った。
「二人で金貨1枚だ!」
シンはイオを益々見直した。というより3歳児という自分のできなさ加減が残念であった。
二人は宿の隣の酒場で食事をとったあと、ツインの部屋で朝まで眠った。シンにとっては久しぶりの熟睡であった。