指名手配
「それにしても、恐ろしい女だったな! この町に長居は無用だ。早く町を出ないと」
シンは立ち上がり、あたりを警戒しながら町の中心に向かった。
「よし、あの女はいないな! まずは腹ごなしだ! どこかで食事をとろう」
シンは簡単な食事がとれるところを探していると、人が集まっているところがあった。
「なになに、宿代を払わずに逃走だと! 悪い奴がいるものだ」
「こんな子供なのに、親の顔が見てみたいわ」
町の人たちが、張り紙を見ながら話をしている。
シンも張り紙を覗いてみた。
「ええーーーーーっ」
シンは驚いてしりもちをついてしまった。
そこにはシンの似顔絵付きで指名手配の張り紙が張られていた。
「は、早く街を離れないと」
シンは群衆に紛れて、ひっそりと中心部から離れていった。
「ひとまず、出口に向かうか」
シンが出口につくと、そこには門番が数人いる。
「あっ!」
門番はシンの似顔絵を手に出入りする人たちを確認していた。
「ここはだめか」
シンは街のすべての出入り口を確認したが、すべての門番がシンの似顔絵を持っていた。
「あの婆あめ!」
シンは宿の女主人のことを思うと腹が立って仕方なかった。
そうはいってもこのままでは捕まってしまい、洞窟に行くどころではなくなってしまう。
「こうなれば、一か八かだ!」
「ガラガラガラ」
「少し待て、荷台を調べるぞ!」
門番は荷馬車の荷台を丁寧に調べている。
「よし問題ないな、通っていいぞ」
「ガラガラガラ」
荷馬車は門番の検疫を通過し隣町である、港町ホーケンに向かった。
「ドサッ」
荷馬車が数時間走ったころ、馬車の荷台からに何かが落ちた。シンであった。
3歳児という小さな体を使って荷台に積まれている小箱の中にシンは隠れていた。
「くそっ、ずっと狭いところにいたから体が固まってしまった」
シンは大きく背伸びをした。
「だがひとまずは街を出ることができた!」
シンは街道をゆっくりと歩き出した。隣町は港町であるため船でその先に行くことができる。しかし3歳児の脚では港町まで、まだ数日はかかる。
「仕方ない、もう街に戻ることはできない。狩りをするか」
シンはシュバと日常的に狩りの真似事のようなことを毎日やっている。3歳児の体ながら、狩りには少し自信があった。
「まずは槍を作るか!」 シンは小さなナイフしかもっていないため、武器を自ら作ることにした。
直径10cm程の枝を折り、先を鋭利に尖らせていく。小さなナイフで狩りに使えるほどの槍を作ることは、思ったよりも大変な作業だった。周りはすっかり暗くなっていた。