冒険者ギルド
シンは街に入って、大通りをゆっくりと歩いていた。
「まずは、今日の宿を探さないとな」
昨日泊まった村と違い通りにはいくつも宿の看板が並んでいた。
「おっ! あれは」
シンは冒険者ギルドの看板を発見した。
「まだ3歳のおれは冒険者にはなれないだろうが、シュバのためにも少し覗いてみるか」
シンは大通りに立ち並ぶ建物の中でもひときわ大きな冒険者ギルドの中に入っていった。
「おおーーーーっ」
1歩入ると、吹き抜けの天井の大広間のような部屋が広がっていた。あたりには冒険者と思われる男女があちらこちらにいる。
冒険者に特別憧れのあるわけではないシンでさえも、興奮していた。
「ぼく! 一人で来たの?」
冒険者ギルドのスタッフのようなお姉さんが優しく声をかけてきてくれた。
「はい、将来のために見学に来ました」
シンは明るく大きな声で子供らしく応えた。
「そう、ここは冒険者が来るところだから、あまり小さな子は出入りするのはよくないわ。少しなら私が説明してあげるから、その後は、お家に帰るのよ」
お姉さんはそういうと隅のベンチが並ぶ場所でシンに冒険者ギルドについて話してくれた。
冒険者になるのは10歳以上、最初はランクGから始まるとの事だ。依頼をこなして一定期間に点数を上げていけば、上のランクに上がることができる。冒険者ギルドは他にも鑑定も行っていて、自らのステイタスを確認することもできる。
「ぼくのステイタスもわかりますか?」
シンはスタッフのお姉さんに尋ねた。
「そうね、もし10歳になって冒険者登録をすれば、無料でみてもらえるわ」
どうやら、3歳のシンでは駄目なようだ。
シンは冒険者ギルドの話をおねえさんから一通り聞いて満足げに大通りに出た。
「よし、今度こそ宿屋を探すか」
シンは大通りに立ち並ぶ宿屋の中でもひときわ大きな看板の建物に入った。入り口にはニコニコした受付の男の人がたっている。
「今晩、部屋は空いていますか?」
シンは受付の男に尋ねた。
「はぁ、ガキが一人泊まれるわけないだろー! 邪魔だ! さっさと立ち去れ」
ニコニコした受付の男はシンが話しかけると表情を一変させてシンを追い払った。
シンはそれから大通りに並ぶ宿屋を順番に回ったが、3歳児のシンを泊めてくれるところはなかった。
「困ったな。どうしよう」
シンは疲れ果てて、路地を歩いていた。目の雨に薄汚れた小さな小屋のような建物があった。看板には「宿」と書かれている。シンは気が進まなかったが、この宿屋にはいってみた。
「部屋はあいていますか?」
シンは疲れた声で尋ねた。
「ガキが泊まれるわけないだろー! だいたい金はあるのか?」
150キロはあろうかという大きな体躯に、顔中しわだらけの女性がそこにはいた。眉間にしわを寄せて、シンを睨みつけていた。
「はぁ、まただめか!」
シンが立ち去ろうとしたその時、宿屋の女はシンが持っている麻袋を見た。
「あんた、その中はなんだい?」
宿屋の女は食い気味にシンに尋ねた。
「はぁ、金貨ですが」
シンは力なく応えた。
「それならそうといいな!」
「いらっしゃいませ! この町一の老舗ホテルエメラルドはお客様を歓迎します」
宿屋の女は突然満面の笑みでシンを迎えた。