盗賊
「なんだお前は! 生意気な奴だ! せっかく命だけは見逃してやろうと思っていたが、お前のせいで全員皆殺しだ!」
盗賊たちは男の言動でかなり腹を立てているようだ。
「ひえーっ!」
商人の男はさらにぶるぶる震えだした。
「・・・・・・・」
老夫婦は声も出ないのか固まっている。
盗賊たちは、謎の男を取り囲んだ。
「おりゃーっ」
盗賊たちは一斉に謎の男に剣を振り落ろした。
「ドサッ」
「バタッ」
「グタッ」
音がやんだ。
「謎の男が倒されてしまったのか。 いよいよ盗賊たちが馬車の中に入ってくるな!」
シンは心の中で呟いた。
「おれだけなら逃げるという手もあるが、そうなると残された乗客が殺されてしまう。ここは戦うしかないか」
シンは覚悟を決めた。
「終わった!」
謎の男がシンたちに話しかけてきた。
「えっ!」
乗客たちは男の言ってる意味が分からなかった。
シンたちは馬車の外に出た。
そこには、3人の盗賊が倒れていいた。
「この男がやったのか、一体何者だ」
シンは盗賊以上に男に対して警戒を強めた。
「そう緊張するな! オレは王国に所属する騎士だ。最近この辺りに盗賊が出るという報告を受け、馬車の乗客に変装して警戒をしていたところにまんまと盗賊が現れたので。打ち取った」
謎の男は騎士だった。
「そうなのか、てっきり悪人だと思っていた。それならこの騎士の戦いぶりをしっかりと見ておけばよかった!」
シンは少しがっかりした。毎日のようにシュバと稽古の物まねのようなことをやってるが、騎士のちゃんとした戦いをみる絶好の機会を逃してしまった。
「私は、ここに残る!君たちは街についたら、騎士団の詰め所に、このことを伝えてほしい」
騎士はそういうと敬礼した。
なるほど、さっきまでは、殺し屋なのかという雰囲気だったが、騎士だとわかると、何だがとっても頼りがいのある好青年に見えるから不思議だ!
馬車は騎士を残して、隣街に出発した。
日がずいぶん傾いてきたころ、馬車は街についた。
シンたちはさっそく、騎士詰め所に向かって詳細を伝えた。
「ご報告ありがとうございます。 我々はさっそく騎士団長のところに向かいます!」
なんと殺し屋かと思っていた謎の男は騎士団長だった。