ガリウス島
気を失ったノブは、海上に出た瞬間目を覚ました。目の前には見たことがない巨大なカニがいた。ハンマークラブであるその右手は5メートもの巨大なハサミになっている。Aランクの魔物である。
ノブはあたりを見渡した、岸までは5メートルほどである。海上では大勇者といわれるノブでも勝ち目はない。ノブは急いで島まで泳ぎだした。
ハンマークラブの巨大なハサミがノブに迫った。ノブはギリギリのところで、この一撃をよけることができた。かすっただけでも、海の中では致命傷の攻撃である。
命からがら地上に上がったノブは背中の剣を抜いた。ノブにさらに迫りくるハンマークラブに渾身のファイヤーストームを放った!ハンマークラブは巨大な火炎の炎に包まれて地上数十メートル目で舞い上げられた。Aランクの魔物を一撃でノブは打ち取った。
「やはり海の魔物は火系統には弱いか。こんなところでオレはやられるわけないはいかないからな!」
ハンマークラブを倒して意気揚々だった、ノブは改めて振り返って島を見た
「なんだ、これは!」
ノブは驚愕した!
空には無数のドラゴン、地上にはゴーレム等の巨大な魔物!眼前に広がる深い森からはこれまで魔王城でも感じたことがない、まがまがしい瘴気が感じられた。
「隠れないと!」
大勇者ノブをもってしてもAランク、Sランクの魔物がうようよいるこの島で生き残ることは至難の業である。さらにこの島にはSランクを超える何かの気配もする。魔王が消滅し、魔物がほとんどいなくなった世界において、ガリウス島だけは、そのままの姿を残していた。
「まずは、あの森に入るか! このお守りがどこまで効いてくれるか・・・・」
ノブはアイテムボックスから魔王の守り玉を取り出し、祈りを込めた。ノブは不思議なオーラに包まれた。
「よし、なんとかいけそうだ! まずは、どこか落ち着ける場所を探さないとな!」
ノブは森の中にゆっくりと入っていった。ガリウス島は周囲30キロメートルの円形の島で、中央には3000メートル級の山がそびえ、その周りを深い森が囲んでいた。
ノブは初めてガリウス島にやってきたが、愛する魔王からガリウス島のことは聞いていた。魔王はこのガリウス島で誕生した。
幼い魔王シャリーンは生まれ落ちた時から魔王であったわけではない。シャリーンを魔王にまで育て上げた存在がこのガリウス島に存在した。
ノブはその存在するかどうかわからない偉大な存在に会いに来た。
「彼は必ず生きている。オレにはわかる! シャリーンを復活させることができるのは彼しかいない!」
ノブは魔王シャリーンにきいた、ほんのわずかな手がかりのみで、このガリウス島までやってきていた。
その時どこからか声が聞こえた。
「とまれ! ここから先に進むことは許さない!」
「なんだ! オレはいかなければならない! 邪魔をするな」
ノブは声がする方向に応えた。
「ザザッ」
太さ数十センチメートルある、巨大な枝がノブに襲い掛かってきた。ノブは剣を抜いて応戦した。
しかし、攻撃はやまず、森全体が襲ってきているようであった。ノブは森の奥にさらに走り抜けた。
「ドサッ」
ノブの足にツタが絡まり、ノブは地面に顔から強烈に倒れこんだ!
「ザザッ」
巨大な木々の枝がノブにおそいかかる・・・・!