約束
「あそこはだめだ!」
「確かに人間がガリウス島へ行くならわれらの力を借りるしかないが・・・・」
人魚姫はガリウス島のいけないことはないが、行くのを渋っていた。
それをみたノブはひざまずいた
「お願いします。私は人間界では大勇者といわれています。連れていただいたら、どんなお礼でもさせていただきます。」
「んっ! なんでもか?」
人魚姫がくいついた!
「はい、どんなことでもさせていただきます」
「しかしなぁ、あの島の周りに魔素や瘴気が強くて、弱い魚人族は魔物になってしまうくらいじゃ。幹部クラスでも体に変調をきたしたり病気になったりするだろう。だから、われら一族の者はあの島に近づくものはおらんのじゃ! まあいけるとしたわらわくらいじゃが・・・・」
人魚姫自らはいけるというが、何か問題があるようだった。
「姫様でも、やはりご病気になられるのですか!皆様にそこまでのリスクを冒してまでお頼みするわけにはいきません。大変不躾なお話をして申し訳ございませんでした。私は何とか泳いででも島に行くのでお気になさらないでください」
ノブは、魚人族に頼むのを諦めた。もともと自らの力で行くつもりであった。あったばかりの彼女らに危険を冒してまで頼むのは虫のいい話だからである。
「まあ待て! そう急くな」
「そなた次第では連れて行ってやらんでもない!」
人魚姫は、諦めようとするノブに待ったをかけた。
「この世界のどこかに、永久の宝玉というものが存在するという。その宝玉をわらわに献上するがよい! 何故あんな島に行きたいのかは知らぬが、その決心は本物のようじゃ!」
「わらわは地上の出来事も少なからず知っておる! 大勇者といえば魔王を倒したものじゃろう! それならば宝玉も見つけられるやもしれぬ!」
人魚姫はどうしても永久の宝玉が欲しいようである。
「承知いたしました! 私の命に代えても姫に宝玉をお渡しします」
ノブは、改めて人魚姫に誓いを立てた。
「おお、そうか! あの宝玉を手にしたものは永遠の若さを手に入れられるという。楽しみじゃ!」
人魚姫は舞い上がっていた。
「わらわでも、あの島の周りの海にはあまり近づかないんじゃ。 どうも島の近くに行くと肌の張りが悪い気がしてのう・・・・」
「それだけですか・・・・」
ノブは口を滑らせてしまった。
「な、何を言う! 乙女にとってお肌の張りは大切なのじゃ!」
人魚姫は本気で怒っていた。
「大変申し訳ありません・・・・それで・・・・島にはいつ?」
ノブは恐る恐る尋ねた!
「そちには、一日も早く宝玉の探索を開始してもらわなければいけないからの、今からじゃ! わらわについてまいれ」
ノブは人魚姫についていくと、海の底であるはずなのに、入り江があった!
ノブがその入り江を不思議そうにのぞき込んでいると・・・・
ドンッ
人魚姫はノブの背中を押して入り江の中にノブを突き落とした。
人魚姫自らもすかさず入り江に飛び込んだ。ノブは入り江につながる深い海に流されて意識がなくなりそうであった。
その時ノブは大きな泡に包まれた。
「息ができる!」
ノブは地上にいるように息もできるし話もできるようになった。
「そなたは、そこでじっとしておれ」
人魚姫はそういうと、ノブの入った泡と一緒に深い海を高速で移動した。
1時間ほどたったころ、人魚姫はゆっくりと泳ぎを止めた。
「ついたぞ!ここから50メートルほど浮上すれば島が目の前に見える! 約束は必ず守るのじゃぞ」
「はい必ず!」
ノブが答えると、次の瞬間泡がとてつもない高速で浮上した。ノブは気を失ってしまった。