表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/350

大勇者

 世界祭典が終わり、大勇者は一人の冒険者として各国を回っていた。

 魔王を倒した褒賞として莫大な領土や財宝を提案されたが、そのすべてを辞退した。大勇者が求めたのは、ただ一つ、どの国にも所属せず、世界を自由に動き回ることができる権利だった。

 魔王シャリーンとの恋路や魔王の最後について、誰にも語ることはなかった大勇者は一人孤独に生きていく道を選択した。大勇者はまだ諦めてはいなかった。神剣で胸を貫かれたとはいえ、800年間世界に君臨した魔王が簡単に滅びるものだろうか。

 大勇者はそう考え、一人の男として愛する女シャリーンの復活を信じ、あるかどうかもわからない魔王復活の何かを探して旅をすることにしたのだ。

 もちろん大勇者としても、人間としても魔王の復活を願うことなど言語道断である。

 だからこそ、何も受け取らず一人修羅の道を行くノブであった。


 魔王が滅んで魔物が弱体し大幅に数を減らしたとはいえ、森の奥や洞窟にはまだまだ魔物がいる、ノブはそうした魔物を討伐しながら、ある場所を目指していた。

 魔王誕生の地と言われている、ガリウス島である。

 ガリウス島に行くには、中央大陸の最南端の港から船で行かなければならない。港から島までは何もなければ10日ほどでたどり着ける距離ではあるが、その海域は常に大嵐で、船乗りたちは誰も近づこうとはしない。

 魔王が死んだことにより、海の魔獣は少なくなったが、この海域に限っては、未だに大型の魔獣が出るといわれている。

 ノブは中央大陸最南端の港町には1週間前にたどり着いていた。しかしいまだに海には出ることができない。誰もガリウス島まで船を出すものがいないからだ!

 ノブは自身の全財産をはたいて、船を自ら作ることにした。既存の船を購入することも考えたが、それではガリウス島にたどり着く前に船が崩壊してしまう可能性があった。

 港町髄一の船大工ヨナンのところにノブは来ていた。

「親方、お願いします! 私のために船を作ってください」

 ノブはもう3日間毎日ヨナンのところに通っている。

「死ぬための船など、わしは作る気にはなれん!」

 ヨナンは一向に首を縦に振ってくれなかった、


「私は死ぬ気などありません。これでも大勇者とまで言われた身です! どんな海の魔物が出ようが返り討ちにしてやります!」

 ノブも一歩も引かなかった。

「そんなに言うなら、クラーケンを倒してこい! やつに襲われて帰ってこない船乗りはいまだにあとを絶たない! 魔王の島まで行くというやつがクラーケンごとき倒せないはずがない!」

 ヨナンは無理難題を言って、ノブに諦めてもらうためだった。そもそもノブには船がない。

 クラーケンがいる海域までは小型の船でもたどり着けるが、そんな小型の船でクラーケンにのぞめば、ひとたまりもないからである。

 

「わかりました! クラーケンを倒せば船を作ってもらえるんですね!」

 そういうとノブは笑顔でかけて行ってしまった!


「おいおい!」

 ヨナンは走り去るノブを止めようとしたが、ノブは光のような速さで去ってしまった。


 ノブはさっそく港で小型の舟を一艘買った。舟といっても、遊園地の池によくあるような二人乗りの手漕ぎのボートくらいの大きさのものだ。

 ノブはさっそうと大海原に漕ぎ出した!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ