セリア
イースト公国の隣国、ライン共和国の首都にあるひときわ巨大な屋敷の一室に一人の少女が騒いでいた。
「あーもう、明日には出発するっていうのに荷物が全然まとまらない!」
イースト魔法学校に出発する前日のセリアである。
「お嬢さま、後は私がやっておきますから! お食事ですよ!」
セリア付きのメイド、カリンである。
「そんなこといったって、持っていきたいかわいい服がいっぱいあるんだもん! 学校に行ったら、素敵な男の子がいるかもしれないじゃない! いつも素敵な私を見ていてもらいたいから!」
そんなセリアを見て、カリンは微笑んでいる。
「お嬢様は、どんな服着ていても素敵ですよ! さあ旦那様と奥様がお待ちです!」
セリアはカリンにせかされて渋々食事に向かった。
「セリアはまだなのか?」
ライン共和国で1、2を争う豪商であるセリアの父は妻であるセリアの母に話している。
「いつもの事ですが、間もなく来ると思いますよ」
食事の予定の時間はとうに過ぎていて、両親はうんざりしていた。
「バタバタバタ」
慌ただしくセリアは食事の席に着いた。
「セリア、女の子なんだから、もう少しおしとやかにしなさい!」
いつもの母とセリアの会話であった。
「まあ、いいじゃないか! セリアも来たことだし食事にするか」
年を取ってできた娘であるセリアに父は非常に甘かった。
「明日からセリアがいなくなると思うと寂しいな・・・・」
「お父様、大丈夫よ! 夏休みには帰ってくるから! その時は彼氏連れてくるね!」
セリアはまだ見ぬ、自分にとっての王子様を思い浮かべていた。
「な、何だと! 彼氏がいるのか!」
父は椅子から立ち上がり、セリアに詰め寄った。
「ちょっと、あなた落ち着いてください! セリアの願望です!」
母は、過保護の父を見て、頭を抱えていた。
「そんなことよりセリア、あなたは彼氏を作るために学校に行くわけではありませんよ」
「わかっているわ、お母さま! 共和国一の魔法の天才児といわれた私がイースト公国の甘っちょろいガキンチョ共をぎゃふんといわせてやるわ! 」
セリアは腕まくりをして力こぶを作って見せた。
「セリア、何してるの、はしたない! あなたは魔法を学びに行くんですよ! 先生や周りの学生の方たちとは仲良くするんですよ!」
母はセリアの奔放な性格を好きだったが、奔放すぎる言動については不安だった。
「ははは、セリア! お前ならイースト公国のガキンチョなどひとひねりだな」
父はとても嬉しそうだった。
セリアがイシンを連れて帰省するのは、もう少し先であるが、この時父と母は本当にセリアが男の子を連れて帰ってくるとは思ってもいなかった。
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