ハンターの力
「デーモンハンター?」
イシンとセリアは初めてその存在を知った。ヴァンパイアデビルの存在が知られているノーザン連合の国々でもデーモンハンターの存在を知る者はほとんどいなかった。
マハの体を覆う青白い炎は地面を張って悪魔に向かっていった。
「くそっ!」
悪魔はそれまでの大口が嘘のように一目散に逃げだした。
「こんなところにハンターがいるなど聞いてないぞ!」
悪魔はハンターの事は恐れていたが、逃げるだけならば可能だと思っているようだ!
「ぐわっ」
青白い炎は悪魔の足に絡みつき、そのまま悪魔を包みこんだ!
「なんだこの炎は・・・・体の力が抜けていくようだ・・・・」
悪魔は必死に炎を振り払うように暴れまわったが、悪魔の体にまとった炎は一向に振り払えなかった。
「無駄だ! その炎は一度悪魔に絡みつくとその悪魔が死ぬか、ハンターが解除しない限り振り払うことはできない!」
マハは冷たく悪魔に言い放った。この青白い炎に包まれている間、悪魔は人間の心臓を食らってパワーアップした力を発揮することができない。それがヴァンパイアデビル狩りに特化したハンターのみに与えられたオリジナルの能力であった。
しかし、この炎をもってしても悪魔固有の力を抑え込むことはできない! 炎で悪魔をとらえた後、ハンターは炎で悪魔をとらえた後は命をかけて大釜で戦うのである、
「こうなれば、お前をオレも命をかけてお前を殺す!」
今まで逃げようとしていた悪魔はマハに向き直った。次の瞬間、悪魔はマハの背後にいた。
ヴァンパイアデビルはそれぞれ固有の能力や魔法を使えるが、この悪魔の場合はその強靭な足腰による常軌を逸した速度で移動する能力であった。
「死ねっ!」
悪魔はその鋭い爪でマハの首筋を狙った。巨大な鎌では短距離では圧倒的に有利だと悪魔は考えたようだ!
「マハッ!」
イシンは思わず声を掛けた。
マハは慌てずその場で回転した。
「ドスッ」
悪魔の右手が大釜に切り落とされて地面に落下した。
「ぐわあああああああああああああっ」
悪魔はその場で転げまわった。
「馬鹿め! この大釜は近距離こそ、その威力を発揮するのだ!」
ハンターが持つ大釜はその形状から、回転するだけで近距離の敵を攻撃することができた。しかしそれにはこの巨大仲間を自在に操る強靭な体と大波の上の小舟でもぶれることのない体幹が必要であった。
「き、貴様―っ!」
悪魔はマハを睨みつけながらも、後ろにいるセリアに気が付いた。
「お前だけは道連れにしてやる!」
悪魔はセリアに飛びかかってきた。
「セリア下がって!」
イシンはセリアの前に出た。イシンは右手を突き出した!
「ピカッ!」
イシンの手から一筋の光が走った!
「ドンッ」
頭部を失ったアクア魔の体が地面に転がり落ちた! イシンの放った光魔法が一瞬で悪魔の頭部を吹き飛ばしたのであった。
「馬鹿な奴だ! まさかイシンに向かっていくとは・・・・」
マハは頭部を失った悪魔を哀れな目で眺めていた。
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