第1魔導士隊隊長ライデン
「もうわかっているとは思うが、大講堂に来てもらったのは訓練のためではない!」
演壇の中央にいる学園長が話を始めた。学生たちは突然の出来事に恐怖と緊張で固まっている。
「ここからは私が話をしよう! 私はイースト公国第1魔導士隊隊長のライデンだ! 私もこの学園の卒業生だ」
とても魔道士とは思えない体格の大男だ。
「皆も知っているように、この1カ月この学園の周囲で何人もの学生や一般人が何者かに襲われ命を落としている」
ライデンがいうには当初、魔物の仕業だと疑い警戒していたが、その警戒網をかいくぐって魔物が襲っているとは考えられないとの事だった。
「じゃあ、一体何だって言うのよ!」
セリアがイシンにしがみつきながら、ライデンに問いかけた。
「これは元気なお嬢さんだな!」
ライデンは不敵な笑みを浮かべて話を続けた。
「何者なのかはわからないが、我々は、この学園の教師や職員、学生の仕業だと考えている!」
「そしてまずは教師、職員を全員調査した! そして最も疑わしい今年入学してきた君たちを調査することにした!」
事件が始まったのは1カ月前からである。ライデンの言うように入ってきたばかりの学生が疑わしいのは当然である。
「人間が、あんなむごいことするわけないわ!」
セリアはそうライデンに話しながら同級生のマハの顔を見てハッとした・・・・
「もちろん我々も、あれだけのむごい殺し方や、血が抜かれ心臓が奪われているいう事実から、人間だとは考えていない」
ライデンがそういうと何人かの学生は何かが浮かんだようだ!
「悪魔!」
セリアが声に出した。
「悪魔?」
イシンはセリアがいう悪魔についてピンと来ていなかったが、この地域の国に住む者たちにとっては悪魔の存在は広く知れ渡っていた。
しかしこの地域に住む悪魔とはいわゆるデーモン種ではなくヴァンパイアデビルの事であった。
ライデンは一つの宝玉を取り出した。大きさは50cm程の球体だ。
「この宝玉は人間に化けているヴァンパイアデビルをあぶりだす力を秘めている! 君たちの中に悪魔がいる可能性がある! この宝玉が真実を明らかにしてくれる!」
「ざわざわざわ」
ライデンの突然の発言に大講堂の真ん中に集められた学生たちはざわつきながらお互いの顔を見合わせながら疑心暗鬼になっている。
セリア達はお互い警戒するために2メートル以上離れて立つように指示された。
「いやよ! 私はイシンといるの!」
セリアは半泣き状態でイシンから引きはがされた。
「大丈夫だよ! 隣にいるから安心して」
イシンは不安で震えているセリアをなだめながらも、周りの学生たちを見渡した。みな疑心暗鬼でお互いのことが信じられないようだ。
「そうだ! かれは?」
イシンはマハの事を探した! マハはこの事態になっても取り乱すことなく落ち着いていた。その落ち着きようが、また不気味でもあった・・・・
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