お披露目3
長身の不気味な学生は標的の前に立って右手を掲げた。
詠唱していないにもかかわらず、彼の全身を青白い炎が包んだ!
「なに、あの色! あんな魔法聞いたことないわ! しかも無詠唱なんて!」
セリアはいきなり現れた炎を見て目を丸くしていた。
「・・・・」
担任のモアナもその不気味な炎に声も出ない様子だった。
「危険だ! みんな、下がって!」
イシンは何かを感じて大きな声で他の学生に声を掛けた!
青白い炎は、地面を這って標的に向かった。
「あの動きはなんだ!」
青白い炎はまるで生きているように地面を標的に向かっていた。炎の温度は1万度近くになり、地面を焦がしている。
「ドグワッ!!!!」
標的にたどり着いた炎は一瞬で標的を消滅させた。そのまま勢いはとどまらず地面の土埃が凶器の様に闘技場に降りそそいだ!
「きゃーっ!」
「うわっ!」
「助けてー!」
闘技場の中は悲鳴が響き渡った!
幸いにも大けがをした学生はいなかったが、多くの学生が全身に擦り傷を負った。
「ふふっ!」
長身の学生はけがを負った学生たちを見て笑顔を見せている。
イシンはそんな彼を睨みつけていた。
セリアはとっさにイシンが盾になったために怪我はなかった。
「ありがとう・・・・イシンは大丈夫なの?」
不思議なことにイシンには小さな傷一つなかった。
「他の学生の事を考えなかったのか?」
イシンは珍しく怒りで顔を真っ赤にして長身の学生に怒声を放った。
「他の学生? 弱者の事をなぜ考えなければならない!」
彼はイシンを馬鹿にしたような表情で応えた。
「なんだと!」
イシンはつかみかかろうとしたが、セリアが羽交い絞めにして止めた。
「あと1名残っていますがお披露目会はここで中止します」
担任のモアナはけが人が大勢出たため、中止を宣言しイシンのお披露目はよくじつにもちこしになった。
クラスの大半がけがを負ったため、本日の以降の授業は中止になり、セリアとイシンは寮に戻った。
「それにしてもあいつは何なのよ!」
セリアはずっと長身の学生の話をしている。
イシンは怒りがおさまり、セリアの話をいつもの調子で聞いていた。
「ちょっとやりすぎだと思うけど、今度ゆっくりと話をしてみようよ」
イシンは孤立している彼の事を逆に心配していた。
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