セリアの見る力
「ねえ、あなたも魔法学校に行くってことは今日はこの港町に泊まるんでしょう! 宿代も馬鹿にならないから、一緒に泊まらない?」
セリアはライン共和国でも有数の豪商の娘であった、商人の娘で無駄なものにお金を掛けたくないという性格であった。
「い、一緒って僕、男ですよ!」
イシンはセリアの言っいる意味が分からなかった。イシンは平民ではあったが厳格な両親に育てられ、男女が同じ部屋に泊まるなど考えられなかった。
「なによ男って! そんなおこちゃまみたいななりして! 心配しなくても襲わないわよ!」
セリアはグダグダしているイシンの腕を引っ張っていって宿屋街に向かった。
本日の馬車が終了した直後ということもあり、宿屋街は人であふれていた。
「満室のところが多いわね! どこかにお得な部屋はないかしら!」
部屋を探してセリアがきょろきょろしていると、呼び込みの男が声を掛けてきた。
「おじょうちゃん部屋を探しているのかい! 早くしないとこの辺りの宿屋はすべて満室になっちゃうよ!」
呼び込みの男は、セリア達の足元を見て、通常の2倍の値段を吹っかけてきた。
「なによ、この値段! あなた私たちの見た目が子供だと思って馬鹿にしてるのね!」
セリアは呼び込みの男に延々と見た目で人を判断しないように、その値段で泊まる人などいないなど説教を始めた。
呼び込みの男はセリアが腕をつかんでいるため逃げられず、嫌々セリアの話を聞いていた。
「これで分かった! 二度とこういうことするんじゃないわよ!」
呼び込みの男は、とてもやつれた表情で何度もセリアに頭を下げて去っていった。
セリアは男に説教している間も、逃げられないようにずっとイシンの裾を持っていた。
「さあイシン行くわよ! もう大通りはだめね!」
そういうとセリアはイシンの腕を再び掴んで裏通りに入っていった。
裏通りにも人は大勢いたが、大通りに比べると少し治安が悪そうな様子であった。
「ここ空いてそう! 行くわよ!」
セリアが指さしたのは、裏通りの中でもひときわ古ぼけた小さな宿屋であった。
「えっ、ここに泊まるの?」
決して豪華な宿屋に泊まろうとは思っていなかったがイシンは、ここはないだろうと心の中で思ってしまった。
「はっ、なに、あなた! どこの王子様よ! 男なら黙ってついてきなさい!」
セリアはごちゃごちゃ言っているイシンを無視して、その宿屋に入っていった。
「一晩2名で銀貨2枚だね!」
入り口を入ってすぐのカウンタ―でセリアが尋ねると、宿屋の主人らしい老人が答えた。
「泊まるわ!」
セリアは笑顔で即答した。イシンはランチ食べるくらいの価格で泊まれるといわれ、ますます不安になった。
2人は部屋のカギを受け取り、2階の部屋に向かった。
「ガチャ」
イシンは恐る恐る部屋の中を除いた。部屋はベッドが2つあるだけでとてもシンプルだったが、きちんと清掃されていて、何も問題はなかった!
「ほらね、私が睨んだとおりこの宿屋は穴場だったのよ!」
彼女は宿屋の外見をみて、古くはあったがきちんと清掃されて無駄な装飾がないことを発見して、この宿屋に飛び込んだのであった。
「君、すごいね!」
イシンは改めてセリアを見直したのであった。
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