デンキンのお見合い2
「まずは座りませんか・・・・」
固まって立って何も話さないデンキンを見て、マグマグから話すのはおかしいとは思いながらもマグマグはデンキンに声を掛けた。
「は・・・・い・・・・しつれ・・・・い」
デンキンは何を言っているのかわからなかったが、倒れるように椅子に腰かけた。
それを見たマグマグとヨーコも椅子に腰かけた。
「どうぞ!」
大使館職員の女性が紅茶をヨーコとマグマグに進めてくれた。
その間もデンキンは緊張して硬直している。
「大使は趣味はありますか?」
誰も話を始めないなか、マグマグが話をふった。
「しゅ、しゅ、しゅ・・・・」
そこまで話しただけでデンキンの顔は真っ赤になり目が充血して、その先を話せなかった。
「デンキン様、少し散歩しませんか!」
ヨーコが緊張で話もできないデンキンを見て散歩に誘った。ヨーコはマグマグに横目で簡単に合図して立ち上がりデンキンの横までやってきて、デンキンを促した。
デンキンは緊張しながらもなんとか立ち上がり、ヨーコのサポートで手と足を一緒に出しながら歩いて部屋を出ていった。
その姿を見てマグマグはあえて何も言わず、テーブルに置かれた紅茶をゆっくりと味わった。部屋の中はマグマグと職員の女性だけになり少し気まずい雰囲気ではあったが、ひとまずはホッとしたマグマグであった。
デンキンとヨーコは大使館の建物に併設された庭を歩いていた。庭とはいってもサッカーグランドほどの大きさがある公園のような大きさで中央にはボートも漕げる池があった。
ヨーコは何も話さず、デンキンに寄り添いながら庭の中を一緒にゆっくりと歩いた。やがてデンキンの緊張が少しずつ解けてきた。
「ヨ、ヨーコさんは、そ、その、しゅ、趣味は・・・・?」
デンキンは勇気をもってヨーコに質問した。
「私は絵を描くことが好きです。 デンキン様はどんな絵がお好きですか?」
ヨーコは焦らずデンキンの答えを待った。
「ぼ、ぼく、は、ふ、ふうけ、い、が、が・・・・すき」
デンキンのたどたどしい答えにもヨーコはゆっくりと笑って待って会話を続けた。
やがてデンキンは少し余裕ができてきたようで隣に立つヨーコの顔をチラチラ横目で見ることができた。ヨーコのはかなげな美しさにデンキンはメロメロになってしまった。
1時間ほどして2人はマグマグの待つ部屋に戻ってきた。
「大使、本日はお忙しい中ありがとうございました」
マグマグは立ち上がりデンキンに挨拶した。
「ま、マグマグ、殿・・・・こ、こちらこそ・・・・あ、ありがとう、ご、ございました」
まだまだたどたどしかったが、先ほどに比べれば十分にデンキンは話ができるようになっていた。
「ほぉ!」
マグマグはそんなデンキンの姿を見て笑みを浮かべ部屋をでた。
「大使、それでは良いご返事をお待ちしております!」
マグマグはそういうと軽く会釈した。
「・・・・」
デンキンは、マグマグの挨拶の内容に再び緊張して返事を返すことができなかった。
マグマグは軽く笑みを浮かべヨーコを伴い大使館を後にした。
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