テオとシン
「ドンテル、ドンテルはどこいったんだ!」
「今はリスって言っても、元魔王軍の幹部なら、何とかしてくれ!」
その時ドアの隙間からひっそりと逃げ出すドンテルをテオは見てしまった!
「そうだった!ドンテルは子供たちにさえいじめられていた!期待した自分が馬鹿だった」
テオは赤ん坊ながら深いため息を吐いた。
「どっちの赤ん坊だ?」
「わからない!」
どうやら男たちは部屋に二人いる赤ん坊のどちらがテオかわからないようだった。
「おっ! ラッキー! 時間稼ぎできるか!」
テオは一転顔が明るくなった。
「構わん! どちらも殺せ!」
リーダー風の男が叫んだ。
「だめだった!」
テオは先ほどよりも深いため息をついた。
「いやっ!」
「ブスッ!」
「ざすっ!」
男たちは次々と二人の赤ん坊を剣や斧で傷つけた。
「ぎゆわっ!」
「ずわっ!」
二人の赤ん坊は声にならない声を出した。
その時、屋敷の騎士たちが駆け付けた!
「賊はこっちか!」
騎士たちと賊の戦いがドアの外の廊下で始まった。
二人の赤ん坊は全身から血を流しどちらの赤ん坊も虫の息だった。
「くそっ、苦労してここまで来たのに、こんなところで死んでしまうのか!」
「悔しい!悔しすぎる!」
テオは、血の涙とよだれを流しながらどうしようもない状態である自らの運命を嘆いた。
「いや、1つだけ方法がある! しかし、1度ならず2度までもそんなことをしてもよいものか。許されないことだ!」
テオは自らが助かる方法があることに気づいたが、その方法をとることはするべきでないと躊躇っていた。
その時テオの思いをよそに、隣で虫の息のシンの魂がテオの目の前に現れた。
「ダメだ! ダメだ! ダメだーーーー!」
テオは心の中で叫んだ、しかし同時にテオはシンの魂を貪り食っていた。
その時賊を倒した騎士たちが、部屋に入ってきた!
「ぼっちゃん!」
「ダメか!」
騎士たちは、すでにこと切れているテオを確認しがっくりしている。
「わあああああああああああーーーー!」
テオの母親が部屋に入ってきた。
血まみれのテオの遺体を抱きしめながら号泣していた。
「おおっ、こちらの赤ん坊は無事だ!」
テオの隣で寝ていた、シンは全身血まみれながら傷一つなく元気な姿だった。
「ああっ、シンあなたが無事でよかった!」
シンの母親はシンを抱きしめて号泣した。
隣でテオを抱きしめて号泣していたテオの母親はシンの母親の言動を見て、恨みを込めて睨みつけていた。
「また、やってしまった!」
シンの魂を食らったテオは無事シンになっていた!