騎士長1
マウント軍にとらわれているイオはひととおりの取り調べは終わったが、完全に嫌疑が晴れていないということで未だ牢の中にいた。
「だしてー・・・・」
「つらいよー」
イオはずっと、牢の中から叫んでいた。これでまいってしまったのが牢番をする騎士たちであった。イオはどんなに注意しても、昼夜問わず泣き言を言っている。騎士たちは精神的に参ってしまって、牢番を押し付け合うようになった。
ハジメはイオとは別の牢獄に繋がれていた。ハジメの顔ははれ上がり体中あざだらけであった。イオに対しては、法に則って取り調べが行われたが、ハジメはゴブリンということで拷問まがいの取り調べが続いている。
「あのゴブリンは、まだ何もはかないか!」
取り調べを担当する騎士長が部下の騎士に尋ねた。
「ゴブリンのくせにしぶとくて、何も吐きません! もしかしたら本当に何も知らないのではありませんか・・・・」
ハジメの取り調べを担当している騎士は、どんなに殴っても何も白状しないためハジメは本当に無実ではないかと思い始めていた。
「馬鹿者、ゴブリンだぞ! やつがわが軍の情報を漏らしていたに違いない! お前のやり方が甘いのだ! 死んでしまっても構わない! もっと厳しく取り調べをせよ!」
騎士長は家族をゴブリンに殺された過去があり、心の外からゴブリンを憎んでいた。
「わかりました! もはや容赦せず取り調べを行います」
騎士は気がすすまなかったが、正義のためと思い強い決心をした。
「騎士長、セロ将軍がお呼びです!」
セロは村からちょうど引き上げてきていた。
「騎士長! あのゴブリンはどうだ!」
セロは村がもぬけの殻だったため、かなりイライラしていた。せめてゴブリンから何か情報を得ているのかと期待して騎士長を呼んだのだ!
「まだ何もヤツは吐きません! つい先ほど、らちが明かないので部下に命にかかわっても構わないので、より強い拷問をくわえた取り調べを行うように指示したところです」
騎士長はセロのいら立ちを肌で感じていた。
「・・・・」
セロは騎士長の狂気じみた報告に一瞬言葉がなくなった。しかし、村からも何の情報も得られなかった状況で致し方ないと思ってしまった。
「将軍、ゴブリンといっても、わが軍に協力している冒険者の従魔です。殺すようなことになれば大きな問題になります! 騎士長、多少強めな取り調べ位は見逃すが、それ以上の事をすれば、そなた自信が処罰の対象になるぞ!」
ラオは話に割って入り、騎士長にくぎを刺した。
「・・・・わかりました・・・・」
騎士長はラオの指示に納得できなかった。
「たかがゴブリンが何匹死んだところで、何故自分が処罰されるのだ! ゴブリンと人間を一緒に扱う必要などないではないか・・・・」
騎士長は独り言をつぶやきながら、牢に向かった。
「これは騎士長! どうされましたか?」
牢番の騎士が突然の騎士長の登場に驚いている。
「これからゴブリンの取り調べを行う! お前は休憩でもしていろ!」
騎士長は牢番追い払おうとした。
「いえ、私は取り調べに立ち会うことになっておりますので!」
牢番の騎士は若手だったが、正義感にあふれ真面目な青年だった。
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