生首
セロは騎士100人を引き連れて、ゴトンを殺害したホブゴブリンがいる村に向かった。
ゴブリン国の裁定など待ってはいられなかったようだ!
セロは今後のゴブリン国の対応次第では、戦争を再開する考えも持っていたのだ。
「将軍、村はこの先でございます!」
セロの側近の騎士が案内した。
「何!」
セロが村に到着すると、村は焼き討ちされたようで、人っ子一人見当たらなかった。
「どういうことだ! ゴブリン国の仕業か・・・・」
村はすべての建物が焼け落ちて、手がかりらしいものは何にもなかった。
「くそっ、これでは、そのホブゴブリンや捕らえられた村人がどうなったのか全く分からんではないか!」
セロは村の隅から隅まで調査したが何もつかめないまま本部に戻ってきた。
「将軍! マグマグ殿がお見えです!」
本部に戻るとすぐに一人の騎士がセロを呼びに来た。
「マグマグ殿、急な来訪どういうことだ!」
セロはマグマグを見るやケンカ腰に話しかけた。
「セロ将軍、お出かけだったようで・・・・ご不在の時にお伺いして申し訳ありません!」
マグマグは不敵な笑いを浮かべた。
「本日お伺いさせていただいたのは、大逆人の首を確認していただきたくはせ参じました」
そういうとゴブリンは一つの箱を部下にもってこさせた。
「これをご覧ください!」
マグマグが箱から取り出したのはゴブリンの生首だった。
「こんなものを持ってくるとはどういうことだ!」
セロはマグマグに問い詰めた。
「どういうこともなにも、そちらのラオ軍師にお約束させていただいた犯罪人の首でございます!」
マグマグはどや顔でセロとラオの顔をみていた。
「ニッカを連れてまいれ!」
セロは村でホブゴブリンの顔を見たことがあるニッカを部下に呼びに行かせた。待っている間セロは考えていた。あの焼き討ちは、やはりゴブリン国の仕業なのか、この短時間に果たして本当に討伐などできるものなのかと・・・・
「お呼びでしょうか!」
ニッカが息を切らせてやってきた。
「このマグマグがゴトンを殺害したホブゴブリンの首をもってまいったという! 確認してもらいたい!」
セロはニッカを首の前に立たせて、じっくりと見るように促した。
「・・・・」
ニッカはゴトンを殺害したホブゴブリンの顔はよく覚えていた。しかし、目の前の首がそのホブゴブリンなのか判別がつかない。もともと、人族にとってゴブリンの判別は難しい、生首になった状態の顔を見ても、判別するのは困難である。
「どうなのじゃ! 黙っておったらわからんではないか!」
セロはなかなか返事をしないニッカを叱り飛ばした。
「申し訳ありません、私にはわかりません・・・・」
ニッカはどれだけ見ても断言することができないようだ。
「人族にはなかなかゴブリンの判別が難しいですからね」
マグマグはそういうとゴブリンの首を再び箱に入れた。
「罪人といえど、ゴブリン族の埋葬はこちらで行わせていただきます!」
そういうとマグマグは箱をもって去っていこうとする。
「まてっ、まだ話は終わっておらん!」
セロは怒気を込めて呼び止めた。
「もちろん、後日賠償のお話など再度お伺いさせていただきます」
マグマグはそういうと涼しい顔で本部をあとにした!
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