セロの怒り
ラオとマグマグの話をずっと聞いていたカチンだったが、2人の話が一段落すると、やっとラオに声を掛けた。
「ラオよ! 今回のことは不幸な出来事だったが、今や我が国とマウント国は同盟国だ! お前も思うところはあるだろうが、ここは平穏に収めようではないか!」
カチンは王になって、すっかり丸くなってしまったようだ。
「カチン王、とりあえず今回の返答をセロ将軍に伝えますが、不幸な事故で済まされるようなことではありません。我が国が納得するような対応をお願いいたします」
ラオはそういうと頭を下げてゴブリン城をあとにした。
ラオはゴブリン城での一部始終をすぐにセロに報告した。
「ガシャン」
セロは持っていたグラスを投げつけた。
「ラオ、そのふざけた言い分をそうですかと聞いてきたというのか!」
セロは怒り心頭であった。
「もうよい、ゴトンの仇のゴブリンをこの手で成敗してやるわ」
セロは剣を抜いて立ち上がった。
「お待ちください! そんなことをすれば再び戦争になってしまいます」
ラオは必死にセロを止めた。
「戦争だと! 上等ではないか! やつらを殲滅してやろうではないか!」
セロはさらに興奮した。
「将軍、とりあえずまずはゴブリンどもの動きを見てはいただけませんか! そのうえで戦争するということでしたら私も反対はしません」
ラオは両手をあげて必死にセロを説得した。興奮していたセロではあったが、ラオの必至の訴えに少しずつ態度を軟化した。
「まあよいだろう、まずはお前の言うことをきいてやる! しかし、今回のことは重大な協定違反だ! 私はもはやゴブリンどもを信用してはおらぬ!」
セロはそういうとラオとの話を終わろうとした。
「将軍、もう少々お時間をください・・・・」
セロはまだ話があるのかとイライラしているようだ。
「信用にかかわることでお話があります! 我が国にゴブリン共のスパイがいるやもしれません!」
ラオの爆弾発言に、セロは再び体を硬直させた。ラオは前王ミトの事をセロに話した。
「わが方が、まだ把握していないミトの事をマグマグは知っておりました」
「今回の小隊の誰かがゴブリンどもに繋がっているのは間違いないと思います」
ラオはセロの目をじっとみて話をした。
「ガンッ」
セロは手に持っていた指揮棒を目の前のテーブルに打ち付けて粉々にした。
「ラオ、必ずその裏切り者をあぶりだすのだ!」
ラオは深々に頭を下げて同意した。
そのころ、村から命からがら戻ってきていたニッカ達はようやく落ち着きを取り戻していた・・・・
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