セロとゴトン
ニッカ達は再び厚い雲に月が隠れ暗闇となった中で、野営をしていた場所まで戻ってきた。
「ニッカどうし・・・・」
ニッカ達が予定外に戻ってきて、慌てて声を掛けてきたユークレオは最後まで言葉を続けることができずに絶句した!
「そんな・・・・」
普段底抜けにマイペースなアヤも膝から崩れ落ちた!
やがてイオとハジメが追いついてやってきた!
「はぁはぁはぁ 何があったんだ・・・・」
「えっ・・・・」
イオはゴトンの首を見て涙を流して固まっている。
ハジメはそんなイオの背中をさすっている。
「ユークレオ殿、何があったんだ」
ニッカ達の騒ぎで目を覚ました騎士や冒険者が集まってきた。
「・・・・」
騎士たちは、自分たちを命をかけて助けてくれたゴトン隊長の生首を見て声を出すこともできずに真っ青になった。
ニッカ達は朝を迎えるまで、ゴトンの首のまわりで、泣いたり叫んだりそれぞれの悲しみや怒りを爆発させていた。
「みんな、オレは必ず隊長の敵を討つために、あの村に戻ってくる! だが今はまず隊長を連れてもどる」
ニッカは怒りで震えながら声をおしだした。
「・・・・」
シュバ達は声を出さずに無言の同意をした。
ニッカ達はシュバの首をもって本部に向かった。その間、ニッカ達が会話をすることはほとんどなかった。
2日後、ニッカ達は本部に到着した。本部はニッカの首をみて大騒ぎになった。和解したはずのゴブリン国で人族の奴隷化が判明しただけでなく、上級騎士が殺害されて生首がさらされたのだ!
その知らせは直ちに本国にも届き、セロ将軍とラオ軍師は再び兵を率いてやってきた。
セロとラオは、ニッカと騎士を呼んで直接聴取した。
「ゴブリンどもめ! 皆殺しにしてやる!」
セロはゴトンとも親しく、怒りに震えていた。
「将軍、お待ちください! 今、兵をあげれば、また戦争になってしまいます! まずはカチンの話をきいてみましょう!」
ラオは今にも戦争を始めそうなセロを必死に抑えた!
「ニッカよ、他にも報告はあるか?」
ラオが冷静にニッカに尋ねた!
「ゴブリン前王ミトについてですが・・・・」
ニッカはミトについての報告を詳しくラオに話した。
「ミトのこと等どうでもよい! カチンの首をとって、城門の前にさらしてやる!」
セロはもはやゴブリンとの共存など考えてはいなかった!
ラオは考えていた。ゴブリンの世界で自分の知らない何かが動いているのかと!
いつもお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字報告もありがとうございます。