歓迎会
翌日、ゴトン小隊は早朝に出発して昼にはナジルの案内で村に到着した。
「こちらが今回引き渡し予定の人族がいる村です」
ゴトン達は村の外で待機して、まずはナジルが村に書類をもって入っていった。ナジルはまっすぐ村を預かるゴブリンの元へ向かった。
「キキキキー」
「ギッギキキキ」
しばらくするとナジルは村のリーダーというゴブリンを伴ってゴトン達のところにやってきた。
リーダーはゴトンに手を出してきたので、ゴトンもその手に合わせて握手した。この村には人間語を話せるゴブリンはいないようだ。後で聞いたところによると、村の人間たちとのコミュニケーションをとることは最初大変だったようだ。今ではお互いジェスチャーでなんとなくわかるようだ。
ゴトン達は村の広場のようなところに案内された。そこにはテーブルや椅子が設置され、花が飾られたりして、ゴトン達を歓迎する準備がなされていた。
ゴトン達は案内されるがままにテーブルに着いた。
「どうも遠いところをごくろうさまです!」
40代くらいの女性がゴトンに話しかけてきた。その女性は小奇麗な恰好で明るい笑顔だった。
「今日は皆さんが来るって聞いたので、おしゃれしちゃいました!」
笑顔でそう話す女性は、ゴトンに酒を注ぐと、戻っていった。よく見ると、ニッカ達にも村の人たちが酒やジュースをグラスに注いでいた。
「キキキキキ」
ゴブリンのリーダーが、先ほどゴトンに酒を注いだ女性に何やら話しかけた。
「皆さんいらっしゃい」
「キーキキキッキ」
「遠慮せず飲んで食べてください」
どうも女性はゴブリンの通訳をしているようだ!
「あなたはゴブリン語が分かるのですか?」
シュバが不思議に思って女性に尋ねた・
「私も正確にわかるわけではないんですが、ずっと一緒に過ごしているうちに大体のことはなんとなくわかるようになっちゃったんです」
女性は恥ずかしそうに笑顔で答えてくれた。
ゴトン達が一番不思議に思ったのは、村にいる老若男女とわず、みな笑顔で幸せそうなことだ。
村のゴブリンも人間たちも皆笑顔で話をしていた。
「ナジルさん、少しお聞きしたいのですが! この村の人やゴブリンは皆仲良く楽しそうなんですが、どういうことでしょう?」
ニッカは村に入ってから抱いていた違和感をナジルに尋ねた。
「この村は比較的、ゴブリンと人との融和がうまくいったときいています。 すべての村や町がそうではありませんが、ゴブリンが村に来たことによって、村や町によっては労働力が増えて以前よりも豊かな生活を送っている村の人たちもいるようです」
過疎化や高齢化が進行している村ではゴブリンがやってきて、最初こそ恐怖に震えていた人たちも、やがてお互い協力して村作りをしていく過程でお互いを尊重して助け合うことにより、以前よりも発展していくことも少なくないとの事であった。
ゴトン達は歓迎会で、ゴブリンと人間の垣根を越えて交流を深めた。
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