蹂躙
「ミトめ! 気づいたようだな!」
カチンは馬を走らせながら笑みを浮かべていた。
一方、ミトの兵達も、城門からなんとか離れ移動を開始していた。
「ガガガガガガガッ」
その時、城門が開いた。
「あっ、城門がやっと開いたぞ!」
兵の何人かは城門が開いたことを喜び門の方に戻ろうとした。
「ドドッドドドドドオド」
城門から1万を超える兵がミトたちに向かって突撃してきた。
「えっえっ、なんで?」
兵たちは困惑して次々とされていく。
「くそっ!」
ミトは自分になかなか追いつけず、仲間だった兵にやられていくのを見て、城門へ馬を向けた!
「王! お待ちください!」
ミトの横にいた兵が指をさした。その先には城門近くまでやってきた数千のカチン軍がミトの兵を次々と襲っていた。ミトの兵たちは城の兵とカチン軍に挟撃され次々と倒れていく。
「カチン!」
ミトは歯を食いしばり、拳を握り締めた。青い血が流れミトの怒りは最高潮に達していた。
「王! お怒りはわかります! しかし王がここでやられてしまえば、王を守っている兵の死が無駄になってしまいます! ここはお逃げください!」
そう話す兵の目からは涙が流れている。
「・・・・死ぬなよ!」
ミトはしばらくゴブリン城の方を凝視した後、馬を走らせた。
「ミトめ、一人で逃げるとはな!」
カチンの顔からは笑みが消えなかった。
「どどどどどどどどっ」
ゴブリン城に新手が現れた。なんとマウント王国ラオ軍師が率いる1000人の騎士部隊であった。
若き日のラオは剣の腕でも有名だった立派な剣豪である。歳はとっているが白馬に乗ってゴブリンを次々と切り倒す姿は圧巻であった。
「なんてことだ!」
ミトはゴブリン城から離れた丘の上で3方向から囲まれて蹂躙されていく兵たちを血の涙を流しながら見ていた。
ミト王とともに、国造りを行ってきた数千の兵たちは次々と倒され、ほぼ全滅状態であった。
「ワハハッハハハハハ!」
ゴブリンの死体の山が築かれた城門の前では、カチンの高らかな笑い声が響いていた。
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