ミト撤退
ミトは全軍に撤退の命令を出してゴブリン城に急いでいた。カチンやマウント王国軍が何かを図っていることは明白だったからだ。長く戦っていれば、確実に何かを仕掛けてくると思い、ミトは形だけ軍として戦うという選択をしたのであった。
ミトはゴブリン城に近づいたとき、すぐに異変に気付いた。城門の上にカチンの旗がはためいていたからである。
「開門! 開門!」
ミトの隣にいた兵が大きな声で城門を開けるよう命じた!
しかし門は一向に開く様子はない。
「ミト王のご帰還だぞ!」
さらに別の兵が開門を要求した。
「ビュッ!」
城門の上から、弓がはなたれ、開門を要求していた兵が討たれた。
「何っ! 味方を撃つとはどういうことだ!」
兵たちが騒然としだした。
「ビュッ! ビュッ!」
城門の上から次々と弓が放たれた。
ミトたちは弓の届かない場所まで一旦下がって陣形を整えた。
「王よ、これは裏切りです! こうなれば力づくで門をあけさせましょう!」
兵たちは、この状況になっても冷静に対処していた。
「ドドッドドドドドドドドド!」
その時背後から地響きとともに土煙が見えた。
「あ、あれは・・・・」
「カチン将軍です!」
カチンは全軍を率いてゴブリン城に向かってきていた。
「なぜ、こんなところに」
兵たちはカチンの不可思議な行動に困惑していた。
「ちょうどいい、カチン将軍にも一緒に城の兵と戦っていただきましょう」
兵たちはのんびりとカチン軍を見ていた。
しばらく厳しい表情をしながら考え込んでいたミトであったが、城外の兵に指示を飛ばした。
「全軍、ここを離れるぞ! 急げ!」
ミトは信じたくはなかったが、ここにカチンが向かってくる意味は、どう考えても1つしかなかった。
城の兵とともにミトたちを挟撃するためだ!
ミトは軍を先導して、城からなるべく離れるため馬を走らせた。しかし、ミトの指示の意図が分からなかった兵たちの動きは鈍く、その間にもカチン軍はどんどん近づいてきていた。
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