マグマグの策略
マウント王国軍の本部前に兵を率いてやってきたカチン将軍は馬を降りて、のんびりと飲み物を飲んでいた。
「将軍、兵の配置完了いたしました」
カチンの副将が報告にやってきた。
「ご苦労! それよりもミト王はどうだ? 城を出たか?」
カチンは目の前のマウント王国軍よりもミト王の事を気にしていた。
「いえ、報告によると、まだ城門は閉められたままのようです」
副将もカチン同様、ゴブリン城の様子を見張っていた。
「やはり少しは戦わんと、それらしく見えんか・・・・」
「よし、ラオに合図を送れ!」
カチンがそういうとカチン軍から黄色の狼煙が昇った。
「セロ将軍、カチンから合図ですな!」
ラオ軍師とセロ将軍は本部の中央の見晴らし台にどっかりと腰をおろしていた。
「ミトも馬鹿ではないからな・・・・しかし、戦いが始まっても出陣しないとなると王として示しがつかんだろうな!」
セロは当初の予定どおり、200名ほどの騎士団中隊をカチン軍に向けて出陣させた。
「よし出てきたな、適当に相手してやれ!」
カチンの合図で、カチン軍からも数百のゴブリン兵が応戦した。
「カン カン カン」
マウント軍本体とカチン軍の戦いが開戦した。
しかし双方とも剣を交えるが、とても本気で戦っているようには見えなかった。
「もう始まっちゃいましたよ! 我らも出陣しましょう!」
ゴトンは自らが所属する第2騎士団の騎士団長に食って掛かっていた。
「ダメだ! セロ将軍からもラオ軍師からも待機という命令が来ている!」
騎士団長にとって、上司の命令は絶対であった。
ゴブリン城でも同じようなことが起こっていた。
「王! なぜ、まだ出陣されないのですか!」
「すでにカチン将軍は交戦されています!」
「同胞を見殺しにするおつもりですか!」
ミトはカチンが出陣したとしてもゴブリン城から動くつもりはなかった。明らかにカチンとマウント軍が繋がっていることがみえていたからだ。
しかしミトが思っていた以上にはるかにゴブリン城内での反発が多かった。マグマグがゴブリン城内の幹部たちを事前に調略していたためだ。さらにマグマグは何人かの斥候に場内の扇動を命じていた。
すでに、ミトはマグマグの術中にはまっていた。
ミトが王の間で激しく詰め寄る幹部たちの意見をはねつけていると、息を切らせた兵が一人扉を開けて入ってきた!
「王! 門の前にいた兵たちが出陣してしまいました」
城門の前にミトの命令を待っていた数千の兵が城門が開いたことによって、命令が下ったと判断して出陣してしまったようだ。これもマグマグの策略であった。
城門の前にいた兵たちはミトの親衛隊が中心である。カチンにとっても邪魔な存在である。このままではカチン軍とマウント王国軍にいいようにやられてしまう!
ミトは立ち上がり、王の間を出て愛馬にまたがった。ミトはそのまま、マウント王国軍に向かった。ミトの後には数百の兵が続いた。
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