赤ん坊
マルオとドンテルは、竜王子の作ったスープを飲んだ後、いつの間にか眠りについていた。
マルオは、スープの効果なのか久しぶりにゆっくりと熟睡した。マルオは目を覚ますとドンテルがマルオのおなかの上でまだ眠っていた。
マルオは立ち上がり、ドンテルは地面に頭から落ちて目を覚ました。マルオはあたりを見まわした。
今までのようなうっそうとした森ではなく、さわやかな草原が広がっていた。竜王の話を聞いたあとなので、気分はこの景色を見ても晴れないままだった。
「おお、いい景色だな。オレはこういうとこに来ると走り回りたくなる」
そういうとドンテルはあたりを駆け回っていた。
マルオが少しドンテルのことを嫌いになった瞬間であった。
「キャーッ、誰か助けて!」
遠くで女性の声が響いた。
マルオはフードを目深にかぶって、走り回るドンテルをわきに抱えて、声の方に走り出した!
人の気配がする手前でマルオは止まって、岩陰に隠れた。
「ドンちゃん、静かに!」
マルオは自分の弱さをよく知っている。むやみに飛び出しても、ただの犬死だ!マルオは機会をうかがうことにした。
どうやら助けを求めたのは若い女性のようだ、年のころは18歳ころか。身なりはきちんと整えられているが、決して華美ではない。良いところで雇われている使用人のようだ!
その腕には赤ん坊が抱けれている。
周りには10人ほどの男たちだ。どの男も目深にフードを被っているが人間のようだ。
「女の赤ん坊に、この人数で取り囲むとは、なんて奴らだ。しかしこの人数で囲んでいるということは、あの赤ん坊を殺すわけではなく、誘拐でもしようということなのか」
「ここは、焦って飛び出さずに、隙を見てあの二人を逃がしてやろう」
マルオは冷静に考えていた。ドンテルにもマルオはアイコンタクトで伝えた。
「グワサッ」
ドンテルはいきなり飛び出そうとした。マルオはドンテルを必死で抱え込んで止めた。
「おいおい、今のアイコンタクトは?!」
マルオはため息をついた。
「おい誰かいるぞ!」
やばい気づかれた!マルオはもはや仕方ないと飛び出そうとした。
「ええい、皆の者、成敗しろ!」
男たちは一斉に若い女と赤ん坊を持っている剣で刺した。
「ぎやぁぁぁぁ!」
女は大きな悲鳴とともに倒れた!
次の瞬間男達は一斉に近くにいた馬に乗って駆け出して行った!
「えっ! なんで?」
マルオは一瞬、訳が分からなく固まってしまったが、次の瞬間、若い女と赤ん坊のもとに駆け出した。
若い女は全身を刺され、体中から血を流してすでにこと切れていた。
若い女の腕に抱かれていた赤ん坊も全身を刺されていたがかろうじて息はあるようだった。マルオは赤ん坊を抱きかかえた。しかしもう助けることは無理だということは明らかだった。マルオは今にもこと切れそうな赤ん坊を見ながら竜王子の言葉を思い返していた!