拷問
「お、おいシン!」
シンのあまりに残虐な攻撃に硬直していたシュバであったが、このままでいけないとシンに声をかけた。
「・・・・」
シンは無言でシュバの方を振り向いた。シュバはそのシンの見たこともない恐ろしい覇気にそれ以上声を出すことができなかった。
スーマは痛みと恐怖で全身を痙攣させながら地面に伏していた。
「こ、ごろしてぐだ・・さい・・・・」
もはや、生きていることよりも楽に死にたいとスーマは懇願した。
「だめだ!」
シンは、今度は左目の前に人差し指を突き出した。
「どりゅりゅ」
シンは右目の時よりもゆっくりと人差し指を突き刺した。そして指を何度もぐりぐりとスーマの脳みそに届くぐらいまで指を突っ込みながら回し始めた。
「グウォッ・・・・フォッ」
スーマはもはや声にならない声を出すのが精一杯であった。
ニッカはシンの戦い、いや拷問から目を離さなかった、いや目を離せなかった。ゴブリンとの戦いで助けてもらったというよりは、恐怖の生物を目の当たりにしているという感情であった。
理屈ではなく本能で、自分を含めこの闘技場にいる生物はすべて、目の前にいる怪物に殺されるに違いないと確信していた。
それはリコやハジメも同じであった。
闘技場の異変をいち早く感じていた者が1名いた! 国王ミトである!
彼はシンが現れてすぐ、そのあまりに凶悪な覇気に恐怖を感じながらも事態の窮迫性を本能で関知し闘技場に向かって走り出していた。
王宮からこの闘技場までは直線距離で10キロメートルほどである。ミトのスピードであるなら、15分ほどで到着する距離であった。ミトにとって、この15分がこれ以上なく長く感じた!
「ヒクヒクヒク」
スーマの生命力はある意味さすがである。通常であればこの状態で生きていること等考えられない。だがスーマは四天王でもとびぬけた能力をもち、当然生命力も群を抜いていた。
それが彼の不幸であった・・・・
シンは左目をつぶした後も、全身の臓器を一つ一つゆっくりと握りつぶしている。
「おい、質問覚えているか?」
「どこに行くんだ?」
シンは無表情でスーマに最初に聞いた質問を繰り返した。
「プシュッ・・・・」
スーマはもはや言葉を発することもできないでいた。
シンは一通り内臓を破壊したのでスーマの頭の骨をゆっくりと握りつぶそうとしていた。
「ピカ―ッ」
闘技場の中に光の塊が天から降ってきた。
「遅かった・・・・」
天使リコは両手で頭を抱え、ため息をついた!
そしてゆっくりとシンに近づいていった。
「だめだ! 近づくな!」
シュバは思わず声をかけた。
リコは構わずシンの横までやってきた!
「ピカ―ッ」
再びリコがまばゆく光った。次の瞬間リコの背中から大きな白い翼が生えた。
リコはそのまま両手でシンの頭を握り締めた!
「パアーッ」
真っ白な光が闘技場を包んだ。
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