下士官の死
4人は少し落ち着いたようで、部屋の中を見回した。どうやら士官の個室のようである。ベッドにソファ、机やイス等ちょっとしたビジネスホテルのような作りであった。特に軍事的な調査の対象になるものではなく、ゴブリンの腰巻や趣味が彫り物なのだろうか、彫りかけの彫像が転がっていた。
「みんな、少しは落ち着いたか? そろそろ行こうと思うが」
ニッカがそういうと、シュバ達は無言で首を縦に振った。やっと声を出さないことが自然にできるようになってきていた。
ニッカが部屋を出ようとして取っ手を握ろうとした時であった。扉が突然外から開いた。
4人はとっさに、コンにふれて部屋の隅に静かに移動した。
「バタン」
入ってきたゴブリンは、やはり下士官のようであった。部屋に入るなりベッドに横になり何か本のようなものを見ている。まずいことに今度はしっかりと扉を閉められてしまった。
コンの能力で気配を消しているといっても、扉を開けてしまえば見つかってしまう!
あくまでコンの能力は見つかりにくくするというものであって、何かきっかけがあれば、その姿が見えてしまうのである。
シュバはニッカに必死で何かをアピールしていた。
「????」
ニッカはわかっていないようだ。
ゴブリンはどうやら、仕事が終わって部屋に戻ってきたようだ。このまま、眠りにつくまで待つしかない!
「ザシュッ!」
ニッカがいきなりゴブリンの喉元を切り裂いて殺してしまった!
「ちょ、ちょっと! 何してるんですか!」
シュバは小声ながらも突然のニッカの行動に激怒した。
「えっ!」
ニッカは戸惑っていた。先ほどのジェスチャーでシュバがこれ以上この小部屋にいるのは限界だから、ゴブリンをやってしまおうといったと判断したからだ。
ニッカとしては苦渋の決断ではあったが、3人の事を考えると致し方ないと自らが行動を起こしたのである。
「殺しちゃってどうするんですか!」
シュバはまだ怒っている。シュバはただ寝るまで待っていようと合図しただけだった。
「す、すまん!」
ニッカは謝りながらも必死に考えていた。ここはもう地下ではない。もしこの下士官の暗殺がばれたとしても、地下の入口がばれるわけではない。この下士官の死も、明日のこの士官の出勤時間までは他のゴブリンたちにばれない可能性もたかい。
「大丈夫だ! こいつはこのまま残していこう!」
ニッカは怒っているシュバをしり目に冷静に指示を出した。
シュバも自信に満ちたニッカの声で落ち着きを取り戻したようだ。
4人はゆっくりと扉を開けて廊下を見渡した。廊下には夜中ということもあり他のゴブリンの姿は見当たらなかった。廊下に出ると慎重に先に進み歩き出すのであった。
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