魂
「私たちは、ずっと人間になるにはという話をしていますが、亜神が私に教えてくれてたのは正確に言えば、人間になるのではなく人間のふりをする方法といえばよいのだろうか!」
「私は今の姿になることによって、元の種族ドラゴン族だけではなく、人族をも裏切っているのだよ」
竜王子は、拳を自ら握りしめていた。その拳からは血がしたたり落ちている。
「亜神は私にいった、人になりたければ、人の魂を食い尽くせと! 魂は神から虫まで、生きとし生けるものすべて持っている。たとえ肉体が滅びても魂があるからすべての生物は生まれ変わることができる。君が人からゴブリンに転生したのも魂があるからだ。人の時も今のゴブリンの君も、肉体は違っても本来の魂は同じなのだ。」
竜王子は続けた。
「魂を食い尽くすということは、その生物のもつ生命力を魂ごと奪いつくすということであり、どんなことよりも最もゲドウなことなんだ。その生物はもう2度と生まれ変わることはできない。永久に消滅してしまう」
「・・・・」
「・・・・」
竜王子は黙り込んでしまった。
「つまり、魂を食らえば人間になることができるということですか?」
マルオは話をやめてしまった竜王子に問うた!
「いや、魂を食い尽くしても人間にはなれない・・・・」
「僕は人間の姿になって何百年も生きている。これを人間といえるか?」
竜王子はマルオに尋ねた。
「確かに今の話を聞くと、人の姿にはなっても寿命は元のままということですか?」
「そうだな、まさに姿は人間なのだ!」
「私はこれまで3人の人間の魂を食ってきた!」
「まさに罪人だな!」
竜王子はすべてをマルオに話す覚悟をしたようだった。
「亜人に言われて私は、それでも迷いに迷った。しかし姫への愛のため私は永遠の罪人への道を歩むことを決意した!」
「私が初めて食べた魂は15歳の若者の魂だった!」
「そして私は魂を奪った若者の体に乗り移った。魂だけでなく、その肉体まで奪ったのだ!」
竜王子の瞳からは大粒の涙が流れた。
「つまり人間になるとは魂を食ってその人間の体を奪うということだ!」
「奪うといっても・・・」
「ただ人の皮をかぶるということなんだが・・・・」
「・・・・」
「今の私は、人の皮を被った竜ということになる」
「だが、その皮も年を追うごとに老化し100年もたつと使い物にはならなくなる」
「そうなると、決断を迫られることになる。そのままその人間の皮と一緒に滅びるか、新たな人間の魂を食べて新たな皮を得るか!」
竜王子は話すことが辛そうになりながらも話をつづけた。
「弱い私は、3度大いなる過ちを繰り返してしまった」
「人間の皮が使えないとき、竜に戻ることは考えなかったのですか?」
マルオは尋ねた。
「この方法の怖いところは一度、人の魂を食らって人の皮を被ってしまえば人として死ぬか人として新たな皮を手に入れるしかないということだ。」
「君に私のように生きる覚悟があるか!」
「いや、誰も私のように生きるべきではない!」