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知将と軍神2

 モーリエはハイエの血でべっとりと赤く染まった腕を軽く舐めながら、ゆっくりとミトに近づいてきた。


「本当は、ぼくの悪口言ってた、そこのゴリラ君にお仕置きしてあげよっかなって思ってたんだけど、今日のところは特別に許してあげるよ」

 モーリエはラオカンの方を横目でちらっと見て話をした。


 ミトはいまだに信じられないという表情で、ハイエのいた場所をただ見ている。


「き、貴様!」

 ミトと同じように、突然の出来事で呆然としていたラオカンであったが、我に返ってモーリエめがけて飛びかかろうとした。


「待てっ!」

 ミトはラオカンの頭を床に押し付け、その動きを止めた。

「モーリエ様! 部下が大変失礼を致しました!」

 ミトは床に頭をこすりつけてモーリエに謝罪した。


「君も苦労するねー!」

 モーリエは明るく話していたが、次の瞬間突然モーリエの声色はとてつもなく冷たいものになった。

「ミトよ、私がわざわざ魔界からこんなところに来たのは、お前や、お前の部下たちが心の底から分をわきまえていないからである」


 ミトはモーリエの言葉を聞いて、体が硬直した。

 片手ではラオカンの頭をいまだに床に押し付けたままだ!


「まあ、そんな固くならなくていいよ! 今日はこのくらいで帰るからさ!」

 モーリエの声色は元の明るいものに戻った。

 

「あ、ありがとうございます」

 ミトは深く頭を下げながらもほっとした表情になっていた。


「ああ、だけどやっぱり!」

 モーリエはぱちんと指を鳴らした!


「バアカッ」

 ミトに頭を抑えつけられたままのラオカンの体はハイエと同じように爆発して部屋中に飛び散った。


「じゃあね!」

 モーリエはそういうと青黒い闇とともに姿を消した。


 ミトはラオカンの頭を握っていたはずの右手を握り締め、頭を下げたまま歯を食いしばった。

 ミトの目からは血の涙がしたたり落ちていた。

 ミトは考えた、オレは何のためにゴブリンの国を作ったんだ!理不尽に踏みつけられてきたゴブリンたちを救うためじゃないか! それがいまや最も理不尽な悪魔にこれ以上ない理不尽な理由で部下を殺された。

 力が欲しい! 力が欲しい!

 ミトは誓った! 

 モーリエも、他の悪魔も、人間も、すべてのゴブリンに敵対するものを滅殺すると!



 ミトは体中に傷を負い、まだまだ自らには力が足りないと思い知った。悪魔だけでなく、人間を滅亡させるためにもまだまだ力が必要だと一人念じた。




いつもお読みいただきありがとうございます。

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