ミト対セロ3
セロは粉塵の方角を凝視している。
「ほお、アレを食らっても生きておるか!」
やがて煙が晴れてクレーターの中心から人影が現れた。
クレーターの中心には1人のゴブリンが立っていた。ミトである。ミトは全身から青紫の血を流しながらも、力強くたっていた。ミトはセロを睨みながら、両手を天に掲げた!
ミトは十二分に魔力をためた後、自らの眼前にストームリーパーを放った!
ミトとセロたちの間に漆黒の闇が広がった! セロたちは動くに動けずにその場にとどまり、闇が晴れるのを待った。
1分ほどして闇が晴れたころ、そこにミトの姿はなかった。
「逃げたか!」
セロは力が抜けたように呟いた。
「追いますか?」
セロの傍らにいた、騎士が尋ねた。
「いや深追いは禁物だ! 今日は痛み分けといったところだな! いやおつりがくるか!」
セロは十分に目的を果たして満足であった。確かに騎士を一人失いはしたが、ミトの力を見ることができた。何より攻撃魔法でミトにダメージを与えることができるとわかったことは大きな成果であった。
ミトは全身にダメージを追いながらもゴブリン城に帰還していた。そして自らを戒めるためあえて回復魔法もかけずに玉座に腰を掛けていた。
今回はラオによる策略だとわかっていながら、怒りにまかせて単騎で突っ込んいってしまった。将としては、あるまじき行為である。今後同じ間違いをしないために、今全身に広がる痛みをかみしめていた。
実際、一つ間違えれば、絶対のゴブリン王であるミトといえど死んでいた。結界をかけるのが後、0.1秒でも遅ければミトは消滅していたのである。
ミトの死は自らの死だけではなく、ゴブリン国全体の死に繋がりかねない。この戦いのあと、ミトは自らにも部下にもさらに厳しく接するようになった。
セロはゴブリン軍の攻撃を警戒しながら陣に戻った。そこにはラオが待っていた。
「将軍、なかなかに面白い戦いでしたな!」
「ラオか! 私自身が戦いという思いもあったが、今回は奴の実力を見極める必要があったからな!」
セロはドカッと腰をおろした。
「戦死した騎士の件はこちらで処理しておきます」
ラオはそういうとセロのテントを出て行った。戦死した騎士は、一応伯爵家の次男である。今後も騎士団への寄付金等払わせるためラオは英雄として祭り上げるのであった。ラオはこうした裏の経営も担っている。
セロはラオの陰の支配者のような振る舞いを見て見ぬふりしていた。自らに不利にならなければラオは騎士団にとって有用だからである。
しかし、セロはラオの動きは常に部下に見晴らせていた。
ラオもまたセロを見張っていたのだが、お互いにそんなことは承知のことである。しかし、そんな二人がいることがマウント王国の強みであった。
ミトにもこうした直属の軍師がいれば、あるいは違ったのであろう。
ゴブリン国にもマグマグというラオに劣らぬ軍師が存在しているが、彼はカチンの部下であった。
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