敗残兵
「将軍、明日にはゴブリン城に向かうことができます」
マグマグはカチンに報告に来ていた。遊撃隊の追い打ちや残存品の収集等のために。カチンは1週間砦に待機していた。
「マグマグよ、ゴブリン城での戦いは砦の戦いのように甘いものではないだろう! そちは決して武力は高くない、前に出ずに自らの身を守ることに徹しよ!」
カチンにとってマグマグの知恵はなくてはならないものである。カチンは他のすべてのゴブリンが死んでもマグマグだけは生き残ってほしいと思っていた。
「将軍、私はそんな間抜けではありませんよ!」
マグマグはカチンの心配を軽く笑い飛ばした。
「いらぬ心配だったな!」
カチンはワインを一気に飲み干した。
ニッカ隊は本部まであと1日というところで、小さな村に立ち寄った。
「今日はこの村で1泊すれば、明日には本部に到着するだろう」
ニッカ達は村にある唯一の宿屋に宿泊することにした。
宿屋の1階にある小さな食堂で簡単な夕食をとっていたら人の男がシュバ達に声をかけてきた。
「君たち、もしかしたら遊撃隊か?」
その男は薄汚れた風を着て、まるで死神のような顔をしていた。
「そうですが、あなたは?」
シュバは風貌から、その男がとても遊撃隊のメンバーだとは思えなかった。
「オレも遊撃隊だ!」
シュバ達はその言葉を聞いて、一瞬顔が硬直した。男は全く気にせず話を続けた。
「オレはテッツ隊長と同じパーティーでずっと、ダンジョンに潜っていたA級冒険者だ! 遊撃隊でも隊長の腹心として一緒に戦っていた・・・・」
ニッカは、今まで気づかなかったが、男の話を聞いて顔をまじまじとみた。
「あっ、あなたは!」
ニッカは遊撃隊の幹部としてさっそうと隊を指揮していた男と目の前の男が同一人物だと気づいた。
「・・・・」
そのあまりの風貌の変わりようにニッカはかける言葉が浮かばなかった。
男はテッツ隊長の最期、遊撃隊と砦のゴブリンの戦いについて詳しく話してくれた。それを聞いたシュバ達は、皆肩を落として驚愕した。
「こんなオレが行ったところでなにもできないと思うが、せめてあのゴブリンたちに一矢報いたいと思って本部に向かっている・・・・」
「生き残ってしまったオレがやらないと!」
男は涙を流しながらテッツ隊長との思い出をシュバ達に語った。
シュバ隊は何も言わず黙って、その男の話を聞いていた。
「おれたちも本部に向かうところです! ぜひ敵をうちましょう」
イオが何故か熱くなって男の手を握り抱き合っている。
「ありがとう、君のような立派な戦士と出会ってうれしいよ」
男とイオは完全に二人の世界を作っていた。
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