テッツの最大魔法
テッツが一騎打ちを受けたことによりテッツとカチンのまわり50メートルから冒険者、ゴブリン共にいなくなった。
この状況になってもテッツはまだ迷っていた。何とか逃げたい、オレは騎士になりたかっただけなんだ。
テッツは1つ大きな事を忘れていた。一騎打ちこそが騎士の醍醐味だということを。本来の騎士であれば強者との一騎打ちこそが最高の見せ場である。その一騎打ちから逃げたいと心底思っているテッツはもはや騎士としての素養がないと言わざるを得なかった。
カチンは一騎打ちの前に再度、身支度を整えるためにテッツに背を向け部下の方を向いている。カチンにとって一騎打ちは特別なものであり、最も大切にしているものであった。それ故、一騎打ちを受けた相手にも敬意を払って、万が一自らが敗れたときは必ず相手に手を出すなと日常から部下に話している。
テッツはこのカチンの姿を見てチャンスだと思ってしまった。テッツは自身の持つ最大の攻撃魔法「ヒュージウインドソード」を放つため魔力をため始めた。
カチンはいまだに部下に兜の紐を結びなおさせていた。
テッツの魔力は最大限まで高まった。
「馬鹿め!」
「くらえ!」
テッツは自らの最大魔法を後ろを向いて油断しているカチンに向けて放った。数百の巨大な風の刃がカチンの頭上から降り注いだ。
「ははっはははっははっはっははっはっはは」
「馬鹿め! 何が一騎打ちだ! 油断しているからだ! お前さえいなければ一気に形勢は逆転だ!」
「はははっはははっはははっはは」
テッツは高らかに笑って、再び自分たちに勝ちの目が出てきたと思った。
カチンのいた場所はテッツの攻撃魔法で地面ごと大きく削れ、カチンを含めカチンの近くにいたゴブリンをすべてなぎ倒したと思われるが、大量の砂煙がまって、カチンの姿は見えない。
「さあ、遊撃隊諸君! 今こそわれらの反撃の時だ!」
テッツは攻撃の手を休めていた冒険者達に再びゴブリン討伐を命じた。
しかし、冒険者たちは誰一人動かない・・・・
テッツは不思議な顔をして問いかけた。
「どうしたというのだ、今こそ絶好のチャンスではないか!」
冒険者の一人が恐る恐る、指をさしてテッツに示した。
テッツは、その冒険者の指した方角を振り返った。
テッツの顔色は一気に蒼白になった。そこには怒りをためにためた表情のカチンが仁王立ちをしていた。その表情から本当の仁王だと思えるほどに堂々としたものだった。
カチンは全くの無傷であった。カチンはとてつもなく怒っていた。自らが最も大切にしている一騎打ちを汚されたのだ。
「ガルルルルルルルルルルウルルッ」
もはやカチンには理性のかけらも残っていなかった。ただ目の前のゴミを消滅させることだけを本能的に感じている獣であった。
のんびり椅子に腰かけ、様子を見ていたマグマグはお茶を飲みながら笑みを浮かべて手をはらった。その合図でゴブリンたちは一斉に後方に下がった。
テッツの足はぶるぶる震えていた・・・・
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